ONCE ダブリンの街角でのレビュー・感想・評価
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音楽が主役の素朴でつつましい佳編
音楽を通じて出会う男女 歌は身近な生活の中に息づくみんなのもの
ダブリンの街角で出会ったストリートミュージシャンの男とピアノを弾く女。
やがて孤独だった二人は、音楽を通じて心を通わせていく。
二人だけではなく、その親戚たちはまた皆が集まった席では歌い、食事とともに日常の中で音楽を楽しむ。
音楽は、有名ミュージシャンのためのものではなく、もっと身近な存在であることが描かれる。
そして男はデモ音源をスタジオで収録するために、同じストリートミュージシャンを集める。
演奏のために集まった人々が、共に演奏し、また分かれていく。
男女二人もそれぞれ問題を抱えながら、引かれながらも結ばれず、それぞれの人生をいきる。
楽しくもあり、少しほろ苦くもあり、人と音楽の関りの根っこの部分を見つめ直す作品でした。
25-090
演奏しているギターは本体に大穴が空いている
5拍子の When Your Mind's Made Up めっちゃ好き♪
ワタクシは、5拍子の曲が大好物。
ミッション:インポッシブルしかり。
デイヴ・ブルーベックの「テイク・ファイブ」しかり。
ホルストの「火星」しかり。
そしてチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」の第2楽章もまたしかり。
そしてこの映画の中の When Your Mind's Made Upも5拍子。
これ、めっちゃ好き♪
* * *
新宿ピカデリー他でリバイバル上映中。
最近、再上映が増えてるのは、新しい洋画が不作だからかなぁ、
などと思いつつ眺めてたら、
あれ? これ、観たと思ってたけど、観てないじゃん、と気づき。
でも上映時間が都合悪いな、と思ってたんだけど、
アマゾンでレンタルできることを知り、300円で借りて観た。
「はじまりのうた」「シング・ストリート」の監督の、出世作。
どっちも、大満足した作品。
そしてこの「ONCE」も、大満足。
* * *
まず、登場人物のキャラがいい。
主な2人はもちろん、
その父、母、楽器店の主人、スタジオのエンジニア、移民の同居人に至るまで、
冒頭のコソ泥若造を除いて、みな愛すべき人柄。
(その若造も、根っから悪い奴というわけではなさそう)
主人公が街頭で歌ってる姿を、手持ちカメラがはじめ遠目で、そしてだんだん近づき、うーん、これって誰かの視線かな、と思ってたら、再びカメラが遠ざかると若い女性がそこにいる。
上手い。
その女性が手に持ってるのは、失業者がそれを売って生活の足しにできるようにと販売されてる雑誌。
発音からしても、どうやら定職が見つからない移民らしい。
という始まり方が、ニクイ。
それから、細かいことは省くけど、主人公がいちおう家電の修理の仕事をしてる、と聞いて、修理してほしいと翌日持ってきた掃除機を、まるで散歩中のワンコみたいに引っ張って歩くのが、可愛くて笑えた。
で、未見の方はぜひご覧になってほしいんだけど、
ここから物語は、ある程度予想通り、でもかなりの程度は予期に反して、動いていく。
その予想の裏切り方もまた心地よい。
ちなみに、エンドロールで驚いた。
主役の男女の役名が、boyと、girl。
そういえば、1回も名前を呼んでなかったわ。
そして「once」にも、意味があった。
上手い。
* * *
それから何といっても、歌。
冒頭に挙げたほか、
オスカーを獲得した主題歌 Falling Slowlyなど、いい曲が目白押し。
それに、セッションは楽しいよね♪
ただ、chorusの字幕が「コーラス」になってたけど、そこは「サビ」でしょ。
掃除機じいさんカッコいいじゃないか
鑑賞動機:Apple music のサウンドトラックのプレイリストにいっつも出てくるのだよね。
過去作を劇場で再上映してくれるのはやっぱりありがたい。
手持ちカメラ中心で手作り感は強いが、音楽についつい聴き入ってしまう。
バンドメンバーやスタジオのディレクターみたいな人はもしかして本物の人?
これでよかった? …これでよかったんだと思う。またこれも一つの選択。アイルランドはやっぱり何か心地よさを感じる。
マルケタ・イルグロバが魅力的
アイルランド・ダブリンの街角でストリートミュージシャンとしてギター弾きながら歌ってた男の前に、チェコからの移民の女が現れた。彼女と話すうち、掃除機の修理依頼を受け、次の日、壊れた掃除機を持って彼女が現れた。修理をするため家に帰る途中の楽器店で彼女が弾くピアノにほれ込んだ男は、彼女のために曲を書き、2人はセッションを楽しんだ。孤独だった2人は・・・さてどうなる、という話。
良い関係になってたから最後は・・・と思ったら外れた。
髭面ミュージシャンのグレン・ハンサードも悪くはなかったけど、移民女役のマルケタ・イルグロバがチャーミングだった。
この作品は2007年公開ということは、2025年現在、37歳の彼女が18歳か19歳の時の撮影だと思うが、大人びた中に可愛さが有って素敵だった。
ラスト、夫と同居する事になってピアノが届き、窓の外を眺める彼女のシーンが魅力的だった。
こころに染みる切なさと温もりのある音楽が映像と共に奏でられる心地良さ
「はじまりのうた」(2013年)でお気に入りの監督になったジョン・カーニーの公開当時大評判を呼んだ世界デビュー作を漸く見学しました。ダブリンに住むストリート・ミュージシャンの男性とチェコからアイルランドに移住した音楽の才能豊かな女性の一期一会のショート・ストーリーの音楽映画。驚いたのは、心に染み入るような切なさと人肌の温もりのある音楽(洋楽に疎いためジャンルも分からず、上手く説明できないのがもどかしい)の親しみ易さと、手持ちカメラの即興的で作為の無いカメラワークの、それでいて生活感をそのまま映し出したようなアングルの自由さと的確さも兼ね備えた撮影の素晴らしさでした。技巧的には演出も撮影も「はじまりのうた」の方が洗練されていて骨格が確りしているし、個人的に古典映画好きの嗜好に合っています。でもどちらが優れているというより、音楽に合わせた映像作りの違いと言えるでしょう。「はじまりのうた」は音楽を楽しむように映像作りがなされていて、この「ONCE」は映像と音楽が一緒に奏でられていました。それは登場人物がいる空間の中に観る者が一緒に存在して、彼らの一挙手一投足を見詰める親近感を醸成しています。
この映画から想い出すのが、クロード・ルルーシュ監督の「男と女」(1966年)、そして高校生時代の青春のバイブル、アーサー・バロン監督の「ジェレミー」(1973年)の2作品です。前者は男女の微妙な恋愛心理をボサノバの独特なリズムで伴奏する、斬新さと色香がありました。訳あり男女の心理的変化を丁寧に扱い、制作費の少なさと音楽の活かし方が近いです。お金を掛ければ良い映画ができる訳でもなく、制作費が少なくても音楽を味方にすれば心地良い映画作品ができあがることを証明しています。後者は、高校生男女の儚い初恋の別れを切ない音楽で抒情的に描いたセミ・ドキュメンタリータッチの身近に感じる青春もので、この映画の質素で巧みに構成された展開の自然な流れに音楽の持つ魅力が絶妙に調和している点で似ています。
何気ない日常の生活シーンでいいのは、女性が故障した掃除機を引っ張りながら行きつけの楽器店を訪れ、メンデルスゾーンのクラシックに続いて自作をギターで弾く男性にピアノを合わせていくところです。二人を囲む様々な楽器とモーツアルトとベルディのポスターが貼ってある音楽が溢れるローケーションと、そこに掃除機がある生活感、何とも言えない味があります。この“フォーリング・スローリー”と言う、飾り気無くシンプルで柔らかな甘さもある曲がいい。それにしても使い込んだギターの穴が開いた状態は気にならないのでしょうか。彼の家で掃除機を修理して、二人だけになってから気まずい思いをするも、翌日仲直りして今度は彼女の家を訪ねるシークエンスでは、移民家族の生活感が良く出ています。母親と子供、それにテレビを観に来るチェコ青年3人の人物の動きとチェコ語の響き。そして男性の曲に作詞するシーンがまたいい。CDデッキの電池切れで街に出て、女性が歩きながら歌うその夜の街の風景。“イフ・ユー・ウォント・ミー”のミュージック・ビデオのような趣があります。この演出タッチは、男性が裏切られて別れた女性を想いながら曲作りするシーンのフラッシュバックで更に切なさが募ります。このアップで押し通した淡くぼやけた色彩の映像が“ライズ”の曲と見事に融合している巧さは、実に音楽的と言えるでしょう。
後半はロンドンに進出するためのデモテープ録音のエピソードがクライマックスになり、バンドメンバー3人が加わった本格的な曲作りを丁寧に再現してくれます。
主演のグレン・ハンサードとマイケタ・イルグロヴァのお二人は実際の音楽家でありながら、無理のない自然な演技でした。表現者として優れた歌手も、歌いながら演じることを身に付けていると思えば当然かも知れません。カーニーの演出との相性も良かった。これは本格的な音楽映画を目指したキャスティングが嵌り、演出家ジョン・カーニーの音楽的素養が映画の世界で開花した珠玉の作品と言っていいと思います。
もやもや、もやっと
穏やかで自然で透き通っているけど ほろっと苦い…私は大好きな作品で...
いい映画。
グレン・ハンサード
·フォーリング・スローリー
·When Your Mind's Made Up
マルケタ・イルグロバ
·The Hill
·If You Want Me
オリジナルの様だが、いいですね。
GoogleLens様々 ダネッ
好みの問題だが、この映画はこの映画らしい終わり方を選べる。要は見る者の内面の問題なんだろうな。経験とかね。
歌と街並みのハーモニーが観どころ
これはハッピーエンドなのか???
路上で歌う主人公を毎日見ていた花売りの女がある夜主人公に話しかける所から2人の物語が始まる。女は別居中の夫の事を主人公の元彼女への未練以上に忘れられずにいたのだろうか?幾ら優しく若い魅力的な男が現れても子供の父親が家に帰ってくれるのが一番良いのは間違いない。
主人公の男は女と偶然出会った事で、望みのアルバム作りが期待以上の仕上がりになったり、元彼女に連絡取る『自信』を貰えて全てが順調に進み始める。その感謝の気持ちとして自宅で好きなだけピアノが弾けるよう女へとっておきのプレゼントをしてあげたのだろう。バイクを借りデートをした時、女がチェコ語で返した言葉は『Ilove you』らしいのでどこまで本気だったのか分からないけど母親としての理性で主人公の誘いを断れたのかな?
2人が満足出来る未来があるのなら、恋愛に発展せず敢えて友情止まりで良かったのかなと思う。
うーん・・だからこそ納得出来ない未消化なラストが『余韻』として残るのだろうな・・
冒頭の投げ銭を盗まれるシーン、女が壊れた掃除機をまるでスーツケースのようにゴロゴロ引いて歩くシーンは側から見てとても面白い。それと主人公にお金を持たせ送り出すよく出来た父親にも感動した。
ジョンカーニー監督作品では「はじまりのうた」「シングストリート 未来へのうた」も観たが、この作品が一番面白かったかな。しかし主人公2人の名前が最後まで出なかったのは驚きだ。
最近90分以上の映画を観ていると寝てしまうので、時間内の音楽ものな...
ハンディカメラが揺れすぎ
意外と歌が上手い銀行頭取!
ドレミレ♪ドレファミ♪と始まる「フォーリング・ストーリー」はアカデミー賞歌曲賞にもノミネートされている。サントラ盤が全米チャート2位にまでなっているほど、音楽に満ちている映画なのです。ミュージカルではないものの、それぞれの歌には出会った男女の想いが込められているので、歌詞がストーリーに溶け込んでるかのようでした。いきなり“君を知らないけど君がほしい”なんて・・・と思ったけど、昔の恋人のことを歌ったものだったんですね・・・
役名のない男女。ストリート・ミュージシャンとしてギターで歌うguy(グレン・ハンサード)とチェコ出身の花売り娘girl(マルケタ・イルグロヴァ)が出会い、音楽を通して心を通わせていくという小さな物語。恋愛としての感情の起伏なんてものより、音楽の素晴らしさに目覚めていくことが中心なのであり、ありふれた恋愛ものとは一味違うのです。ラストもいろいろと想像させてくれるし。
演奏されるのは70年代風のフォークロックといったところでしょうか。彼らの曲がスタジオディレクターを唸らせるほど斬新なものではないにしろ、心がこもった優しい恋愛の歌にうっとりしてしまう。もともとはグレンのギター弾き語り用の曲。楽器店でマルケタとセッションして生まれるハーモニーは彼にとっても新鮮だったし、音楽の可能性、コンビを組めば素晴らしいものができると感じた一瞬でした。なぜだか、こんな序盤で涙が・・・
さあ、プロデビューを目指してデモテープ作りするぞ!てな展開は唐突感もあるのですが、彼女とのセッションがあってこその展開なんですよね。それに簡単にバンドメンバーを見つけるシーンなんかは偶然すぎるけど、音楽映画はほとんどがこのパターン。理屈なんて要らない。純粋に音楽を楽しむためには超絶技巧派ミュージシャンなんて必要ないものです。
全体的なストーリーのバランスはしっくりこないけど、随所にバンド経験者なら理解できる懐かしさが織り込まれてたり、どことなく笑えるシーンもあったりしました。マルケタのアパートの住人なんてずかずかと入り込んでテレビを見始めたり、覚えたての英語が「妊娠していますか?」だったりして、笑わせてくれます。
グレン・ハンサードが俳優ではなくミュージシャンであるだけに、この映画のような経過でプロになったんだろうと想像できる。初めてのスタジオでも怖気づくことなく楽しんで録音してたのが良かったのでしょう。今はデジタル全盛の時代。パソコンでもプロ仕様のソフトがあるんですから、自宅ではカセット録音してる光景を見ると、貧しさということも伝わってきます。
〈2008年2月映画館にて〉
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