自虐の詩 : インタビュー
「池袋ウエストゲートパーク」「トリック」といったTVドラマから、映画「明日の記憶」「包帯クラブ」まで、数多くの作品で知られる堤幸彦監督が、業田良家の同名人気4コマ漫画を映画化した「自虐の詩」。自身で最も満足度が高い作品と公言する本作について、堤監督本人に話を聞いた。また、本作に出演したカルーセル麻紀&遠藤憲一のインタビューもあわせてお届けする。(聞き手:編集部)
堤幸彦監督インタビュー
「世知辛い世相に、暗いだけの映画は作りたくなかった」
――原作の舞台は東京・東池袋ですが、映画では、なぜ大阪・飛田だったのでしょうか?
「まず中谷さんの『嫌われ松子の一生』を見たんですが、とても良くできた映画で、中谷さん主演で、同じことをやっていては『嫌われ松子』を超えることは出来ないと思ったんです。では、どうすれば違うイメージに出来るかを考えたときに、関西に行くっていうのが手段としてあるのではと考えたわけです。それで、関西に行くんだったら飛田を舞台にしてしまおうということになったんです。最初、東京の話を大阪でやるのはちょっとどうかということを言われましたが(笑)、やはり強烈な雰囲気をもった街だと感じていたし、阪本監督の『どついたるねん』とかも大好きだしね。で、このアイデアが浮かんだ次の日には、飛田に行って、色々リサーチをしてました」
――それは大英断だったかもしれませんね。
「遊郭、あいりん地区もすぐ横にありますが、僕は飛田の商店街が大好きで、商店街が特に撮りたかったんです。映画で使ったセットも、道の感じから下水道まで、しっかり真似て作りました。パンション飛田というのが劇中に住居として出てきますが、亀田3兄弟のジムの50メートルくらい先に本当にあって、“なんだ、パンションって?(笑)”って感じで写真を撮って、そのままのセットを作らせてもらいました。美術セットはかなりリアルですよ。ロケ撮影の時も、商店街の方はとても協力的でしたし、スムーズに撮影出来ました。通天閣の下でリヤカーをひっくり返したときはかなりの数のギャラリーが集まりましたが、それ以外で新世界・飛田近辺での撮影が大変だったということはないですね」
――飛田に対する役者さんたちの反応は如何でしたか?
「中谷さん、阿部さんともに、この映画に飛田という街の存在が必要不可欠だと言うことを理解していましたね。特に中谷さんは自分でも何回か飛田に行ったことがあるそうです。あと、カルーセルさんは新世界・飛田ではかなりの人気者でした。中谷さんが歩いていても何も言われてませんでしたが、カルーセルさんが歩いていると殆どの人から“あ、カルーセルだ!”って言われてましたね(笑)」
――暗く悲惨な話とコメディの境界線上を進んでいくような構成が素晴らしいと思いましたが、意識的にそうしたのでしょうか?
「舞台設定以外では、原作に忠実でありたいっていうのはありましたよね。それと、暗いだけの映画は作りたくありませんでした。それは『嫌われ松子』と比較してどうこうということではなく、あまりにも世相が世知辛いので、明るいメッセージを込めて作りました」
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