「ガトリング銃を装備し、完全武装」3時10分、決断のとき kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ガトリング銃を装備し、完全武装
ダン(ベイル)の一家。いきなり馬小屋に火を放たれ炎上する。借金のカタに牛まで取られてしまったのだ。ダンは戦争で片足を失い、もっと悪ければ年金ももらえてたのになどと嘆く・・・
リメイク版の駅馬車はちょっと様子が違う。ガトリング銃を装備し、完全武装しているのだ。襲われたときには4人のベンの手下を殺している。こりゃ銃撃戦になっても正当防衛てのがどうなるのか・・・と、保安官が正当な裁判でベン・ウェイド(クロウ)を裁くなんて台詞もないし、とにかく悪い奴だったんだと思わせる。グレン・フォードとラッセル・クロウ。一見していい人に見えるという点ではグレン・フォードの勝ちだ(笑)。そして、このリメイク版は人がかなり殺されてる。
冒頭からダンの息子たちがかなりクローズアップされてるのも事実。特に14歳の長男ウィリアムは勝気で勇ましい。
オリジナルでは描かれてなかった、ダンの家からコンテンションまでの道のりをかなり詳細に描いていて、護送に同行するのは、バイロン(なんと、ピーター・フォンダ)という賞金稼ぎと彼の怪我を治した医者(実は獣医)が追加されていた。しかも、その追加の二人も命を落とし、おまけにベンが暴れたときにダンの息子ウィリアムが助けに入るのだ。凄いぞ!少年。しかもドッジシティの売春婦の話に生唾を飲み込むほどお年頃・・・彼の存在があるため、今回はアリスがコンテンションまでやってこないのね(あれは意味なかったようにも思う)。
それにしてもベンの凶悪ぶりはバイロンだけでなくタッカーも殺してしまったことに表れている。それもフォークでめった刺しにして・・・なんだかホラー映画風味だったりもする。そのタッカーはダンの家に火を放った張本人!そして、手錠を切るために一旦は逃げ出したベン。護送の一行が乗る馬をも盗んで、中国人が働く鉱山に入るが、そこではベンを仇として憎む奴もいて、拷問されていた。護送団がようやく鉱山にたどり着いて、ベンを救い、鉱山を逃げ出すという展開。その直前にはアパッチのくだりもあったりするが、インディアン蔑視のため衰退した西部劇へのアンチテーゼなのかもしれない。
コンテンションのホテルに到着し、ベンがダンを多額の金で誘惑。金の魅力にどんどん汗を噴き出すところも演出・演技が優れていた。そして、息子ウィリアムの存在が大きくなり、息子たちに蔑まれた目で見られた父親の名誉回復といったテーマの比重が大きくなる。悪を野放しにできないと言ってた台詞も、ベンに「頑固者!」と言われてようやく重たい口を開き、次男マークが結核にかかり、乾燥した土地でしか生きられないとか告白を始める。短い時間の間にベンのダンに対する友情が芽生え、手下の人数がどんどん膨れ上がるのに、自分も協力して駅へと向かうのだ。
激しい銃撃戦を潜り抜け自ら囚人用の車両に飛び乗ったベン。そこへ残忍なチャーリー(ベン・フォスター)を筆頭にダンの前に立ちはだかる。ベンの「やめろ!」と制止する言葉にも耳を貸さず、ダンを射殺・・・オリジナルと全く違う、涙なしでは見られない展開となった。「俺には誇れることが一つもない」との最期の言葉。列車まで護送するという名誉をこの男に与えてやらねば自分の男がすたる。何しろ、ウィリアムがずっと睨みつけているのだ。そして、ベンは自らの銃で仲間を全員撃ち殺してしまうのだ。ウィリアムは銃口をベンに向ける。が、撃たなかった。うん、これじゃなきゃいけない。ウィリアムが撃ってしまうと、彼の人生も変わってしまうはずだ。撃たれなかった・・・だからこそ自らもう一度檻の中へと戻ったベン。このシークエンス最高!全く違った結末だったけど、オリジナルを完全に超えた。