劇場公開日 2007年8月25日

ショートバスのレビュー・感想・評価

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3.5イマドキの恋愛映画?、

2013年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

 この作品は、全編にわたってセックスが描かれている。しかも、同性愛やSM、性的快感を求めたい者たちばかりが登場するのだから、どこかの不倫映画のように官能的でもなく、優雅な描写などひとつもない。ところが、そんな官能的な作品よりも、登場人物たちの心の温もりが観客の心に強く響いてくるのは、セックスが作品のテーマではなく、ひたすらに心と心の繋ぐ愛を求める、人間同士の触れあいに焦点を合わせているからではないかと思う。

作品のタイトル『ショートバス』とは、同じ悩みをもつ人々が集まる場所をスクールバスに例えて表現したものだが、そこに集まるセックスや愛に関して悩む人々を、前作『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で同性愛に悩む人々を真摯にとらえたジョン・キャメロン・ミッチェル監督らしく、喜劇的ながらも、どこかもの悲しく、切なく描いている。それがこの作品の場合、セックスとは人と人との心を繋ぐ道具、ということをより明確に表現している点が今回の演出の巧みなところだ。確かに、愛のないセックスは信じられないかもしれない。しかし愛以上のものを得ようとするとき、セックスすらも意味のないものになってしまう、ということを、この作品で監督は、密かに訴えかけているように感じずにいられなかった。
 私はこの作品を見ている最中、ずっと失恋の後のことを思い出していた。恋愛に不器用な者にとって、失恋の痛手は心に深い傷を残し、愛以上の心の絆を欲しくなる。この作品の登場人物たちは、心に負った深い傷を埋めるために、絆を求めてセックスへと向かう。この方法論は間違っているように見えても、心に傷を負った経験のある者には共感するところが多く、そして最後には胸の中に温かいものがこみあげてくる。その意味でもこの作品は、実によくできた素晴らしい「恋愛映画」だと思う。

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こもねこ