「愛すべきB級映画の逸品?」プラネット・テラー in グラインドハウス こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
愛すべきB級映画の逸品?
ウソ映画の予告編からはじまるこの作品、のっけから奇妙キテレツで、出てくるゾンビたちのように、観客の頭を吹っ飛ばせてしまっている内容だ。
それなのに、最後には爽快さを感じるくらいに面白く見られたのは、次から次へと展開していく作品全体のテンポの良さ、破天荒な演出ぶりに、見ている側は呆気にとられるどころか、呆気にとられること自体を楽しんでしまわせたからだ。この作品の監督ロバート・ロドリゲスの演出は、ハチャメチャに見えて、実は、「猿の惑星」や「ワイルドバンチ」などの過去の名作を巧みに取り入れた、計算されたような上手さがあるのではと思わせて、ちょっとのめりこんでしまいそうになった。
この作品は、昔の場末の映画館にかかっていたB級プログラムピクチャーを意識して作られている。だから、面白ければそれでいい、というスタンスをあくまでも貫き通し、最近の映画によく見受けられる、「人間とは?」「社会とは?」なんていう理屈っぽさ、説教臭さが一切ない。そんな監督の囚われたところなどない潔さ(いさぎよさ)がスクリーンから伝わってくるからこそ、観客は心から楽しむことができたのだが、その潔さとは、実は今の映画界、そして映画ファンが忘れかけていたものではないかと思う。
場末の映画館がなくなりつつある今も、B級映画は作られている。が、その中に観客をわくわくさせるほど面白い作品がないのは、演出や役者にB級という照れや恥ずかしさが見られたり、物語に人間的な何かを求めようとしていて、本来の映画の面白さへと突き抜けてないからだと思う。その点、演出や役者が面白さにのみ追求しようとしたこの作品の潔さは、まさしくB級映画、というより映画が本来持っている真髄なのだ。その意味では、映画を作る側の者たちは、この作品から学ぶべきものが多いのかもしれない。