劇場公開日 2007年9月1日

「【コントラスト】」ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【コントラスト】

2021年3月10日
iPhoneアプリから投稿

「新劇場版:序」は、テレビシリーズを踏襲しているものの、ターミナルドグマに幽閉されているのが、リリスであったり、ミサトやリツコの過去に触れる場面もなく、根本的に異なる物語を模索していたことを窺い知ることが出来る。

そして再構築されたシーンが、より色鮮やかになり、物語の苛烈さと矛盾するかのような澄み渡る青空、豊かな緑、古くからあるような街並みと超近代的都市の共存が、何を示唆しているのか、さまざまな疑問が生まれてくる。

散りばめられた対比は、バランスしているようであり、でも、実は、積み木のように積み重なり、ちょっとした揺れで崩れてしまいそうな危ういイメージでもある。

実は、脆(もろ)い僕達の世界のようだ。

青い空に、赤い海。

鮮やかな緑に囲まれた電線の残るノスタルジックな街並みと、近代都市。

戦闘と生活が同居する空間。

街に人は描かれないが、教室や電車など閉ざされた場所には人が多くいる。

知恵の実と、生命の実。

戦う子供と、指示する大人。

碇シンジと、綾波レイ。

碇ゲンドウのシンジと、レイに対する異なる態度。

やまあらしのジレンマ。

傷つかずにやり過ごすことは出来ない。

実は、常に矛盾の中で生きることを強いられている僕達のことを描いているのだろうか。

あなたを守る。

綾波レイの碇シンジに向けた言葉。

命令だからなのか。

命をかけて守りたいと思うには、本当は愛が必要ではないのか。

この「新劇場版:序」では、少年や少女が大人の入り口に立った時に感じる、社会の矛盾や揺れ動く心、自分自身はどうあるべきかなど不安を表しているのではないか。

多くの疑問は、「新劇場版:破」から、明らかになっていくのだろうか。

ワンコ