「棘が気になる・・」天然コケッコー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
棘が気になる・・
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一途な純愛「初恋の来た道」、躍動する青春「スィング・ガール」、田舎嫌い「下妻物語」、子供の情景では「やかまし村の子供たち」と心に残る名作が多いのでどうしても比べてしまう。
映画の基調は素朴な田舎の美景や純真な子供の情景ではありません、むしろそういった既成概念を壊すことに注力しているように感じます。
過疎の学校、転校生にみんなが期待膨らむ様子を見せて、期待を裏切るぶっきらぼうな登場。海へ行くエピソードも最初は子供たちが唄をうたいながらルンルンの様子を見せておきながら、暗い雑木林や幽霊話、サスペンスまがいの倒れる少女、迫る電車と支離滅裂な展開、この映画で何を描きたいのか意図が読めない。威圧的な父親も一皮むけば振られたことを根に持ち未練を引きずるダメ男、さえない郵便局員と中2の乙女では余りにも不釣り合い。都会育ちの少年の性への好奇心と田舎のおぼこ娘のコントラスト、アウターと引き換えに初キッスという突飛なプロットもきれいごとを排したい作家性なのだろう、そういったところどころの棘のようなものが痛く思える。
ドラマ性は希薄でエピソードを並べる構成、良かったのはおもらしのさっちゃんのエピソード、いつも失敗して、そよ姉ちゃんに助けてもらうばかりだが、健気に我慢しすぎて膀胱炎とはいたわしい。さっちゃんは別格だが子供たちの輝きに比べて登場する大人たちの人物像の浅薄さは何なのだろう、時々挿入される美しい風景や動物のしぐさ同様、添え物ということか。
原作の余韻の映像化が難しいことは分かるが余韻を残すこととテンポの悪さは同義語ではありません、尺を伸ばすのではなくメリハリの面ではもう少し練り上げても良かったでしょう。
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