「史上最高の閉所肉弾戦」ボーン・アルティメイタム The Dudeさんの映画レビュー(感想・評価)
史上最高の閉所肉弾戦
前半と中盤にある大衆をかき分けてのアクション・シークエンスは凄い。ゲリラ的撮影のリアルな臨場感は、編集の緻密さと相まって低予算独立系出身の肝っ玉監督グリーングラスにしか見せられない芸当だ。特にタンジールでのチェイスは、追われる者、追う者、それを追う者、それを追う警官たち、を交錯させる荒技ぶりで凄い。異郷の地で、というのがまた凄い。とどめに最後の閉所肉弾戦は、今まで観た映画の中でも最高の格闘シークエンスときた。技、スピード、小物の使い方(すげぇぇぇ)、どれも凄まじく手に汗を握る。もうこの時点でお腹いっぱいである。
おなかいっぱいのせいか、後半のアクションはそれ程には盛り上がらなかった。まず、ハードなカーチェイスは前作の焼き直しであり(高レベルだが他にアイデアは無かったのか)、研究所の攻防は老博士とのテンポの悪い回想シーンを挟むために今ひとつ。最大の敵であるはずの「パズ」に迫力無く、また人並みの葛藤を見せるのも…今までのトレッドストーン工作員の不気味さが欠けていてどうも迫力がない。ストラザーンは小悪党であり、フィニーもマッドサイエンティストには優しすぎる。彼らが受ける報いの描写もアッサリしており物足りない。
アクションの中身が増量した分、物語展開にはアラが目立つようになった。ボーンとニッキー、パムとの邂逅は都合が良すぎる偶然であり、またノア・ヴォーセンの秘密を窓から覗くというのも…CIAがそんな丸見えでいいの?
そんな気になるアラはともかく、アクションに時間を割く一方で感情に訴える物語は小さくなった。その辺がコンパクトに絡み合った前作は見事だった。そういった部分が無いのを非常に惜しく思う。現場現場で脚本書き直してるんじゃあ仕方ないけど。
ニッキーの笑顔で終わるラストは流石に良い余韻。ジェイソン・ボーンの名が世間に流れたのは打ち止めの意思表示?難しいだろうが続編を是非。
しかし、とーても残念なのは、その後に流れる"Extreme Ways"がアレンジされていたこと。モービーのガラガラ声で十分ハードボイルド。「オーベイベーオーベイベー」のとこでコーラスは要りません。