劇場公開日 2007年9月15日

「ピーター・ラビットがあまりにかわいくて、感激して涙が出てきました。」ミス・ポター 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ピーター・ラビットがあまりにかわいくて、感激して涙が出てきました。

2008年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 波乱万丈の映画なのかなと臨んだ映画でしたが、これまで見てきたどの作品よりも、とても穏やかな、ゆっくりとした時間の流れる作品でした。心がほっこりと癒されました。 特にクリス・ヌーナン監督がほかにない映像と言うことで、随所に劇中に出てくるピーター・ラビットなどのキャラクターが突如アニメーションで動き出すのです。ホントに生きているように愛らしく動き回ります。それがあまりにかわいくて、感激して涙が出てきました。きっとポターもこんな思いで、自分が描く動物たちを見つめていたのでしょう。 限りなく人間に近いポターの「仲間たち」は、実はきっと精霊界の精霊の化身で、彼らがポターにインスピレーションを送っていたんだなと思いました。あんな素敵な物語を書きつづったポーターは、単なる空想ではないのですね。

 またロケに使われたイングランドの湖水地方は、ポターが購入して農場を営み、遺言でナショナル・トラストに寄付した場所です。なんて美しい風景なのでしょう。まるで絵画の世界・・。映像を観ているだけでうっとり。
 小地蔵は、葉祥明語り部コミュの管理人をしています。湖水地方の風景は、葉祥明さんの絵の世界にも出てきそうな感じです。そして葉祥明も生き物をとても愛しています。絵本作家って、動物好きっていう共通点があるのですね。

 ポカポカと日だまりのように進んでいく物語の中でも、後半ポターに悲しい現実が襲いかかります。それでもロンドンを去って、この美しい風景に救いを求めることで、新たな生き甲斐をも見つけて行きます。その悲しい過程を描く作品のまなざしも温かくて、ホッとさせてくれました。ポターがなぜ、イギリス中で最も美しいこの場所に、あんなにまでも平和を求めたのか、誰にでもすぐに理解できるようなシーンなっています。

 冒頭の台詞に、湖水地方の風景をバックに、ポターは物語を書き始めることは、新しい冒険の始まりなんだと語ります。絵本作家ってそんなわくわくドキドキしたイメージで物語を紡いでいくのかと思いました。そうしたら、ラストにもこの台詞がリフレインされます。なんとこの台詞は、ポター自身の人生の始まりを暗示する言葉であったのです。
 この一言で、比較的短めの作品が、ポターの幸せなその後をずっと思いはせてくれる、素敵な終わり方でした。

 とにかくポターを演じるレニー・ゼルウィガーがとてもはまってるように観えましたね。それほどイメージにぴったりだったのですよ。

●この作品のロケのこだわりについて
 美術監督のマーティン・チャイルズは、スタジオよりマン島での撮影にこだわり、雨やみぞれや雪に見舞われながらも、マン島にポターの家を建設して撮影したそうです。
 惜しくも彼女が最初に住んだ家であるヒルトップは観光地となっていて、ロケはできませんでしたが、ポターのもう一つの家であるユー・ツリー・ファームで見事にヒルトップへとリメイクされ撮影されました。
 また、ひと夏ロンドンを離れることになり、見送るノーマンに別れを告げるシーンは、かの有名なブルーベル鉄道で撮影された。まだ蒸気機関車が全盛だった頃の鉄道で、現在では観光客専用になっているという本物の鉄道だったんです。
 さにら、タイプライターや印刷の歴史が展示されているタイプ・ミュージアムが使われた。このシーンには本物の印刷職人が出演、その中の一人は、実際にフレデリック・ウォーン社から依頼されて、ポターの本を印刷したことがある経験者なんですね。

流山の小地蔵