「本作は大林宣彦監督のさよならの挨拶だったのです」転校生 さよならあなた あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
本作は大林宣彦監督のさよならの挨拶だったのです
転校生
-さよなら あなた
転校生は二つあります
1982年のオリジナル版と2007年版の大林宣彦監督25年後のセルフリメイクの本作の二つです
後者の方には、「さようなら あなた」との副題がついています
前者の方は何が問題なのか今は視聴困難になっています
DVD はだいぶ昔に廃盤になっていて中古が高額で取引されています
配信もオリジナル版はどこにもなく、あるのは2007年版の本作だけが検索ででてくるのみです
尾道が舞台になっているのは1982年版の方で、2007年版は長野市が舞台です
大林宣彦監督がなぜセルフリメイクされたのか、舞台を長野市に変更にしたのかについてはさほどの大きな理由があったわけではなかったようです
ストーリーは、高校生の男女が入れ替わるというのは新旧ともに同じ、新作の設定に対応したドタバタが旧作をなぞります
しかし後半になり、一美が入院してからは、新作のオリジナルストーリーが展開されます
男が女に、女が男に心だけが入れ替わる
考えて見ればトランスジェンダーということです
片方の性が死んでしまえば、それはその人の存在そのものの死だとの問題提起であったわけです
1982年から25年経って世の中が転校生に追いついたということです
本作では、さらにアウティングがその人を死に追いやることもあるとの問題提起もされているわけです
1982年版の転校生が視聴困難だから新作の方だけを観ましたでは転校生を観たことにはなりません
大林宣彦監督の代表作の転校生はやはり1982年の尾道版しかありません
まだの方は視聴困難でも、そこをなんとかしてご覧になられるべきです
そして、本作はその後で是非ともご覧になられて下さい
大林宣彦監督のファンなら絶対に見なければなりません
冒頭に献辞があります、
25年昔の「転校生」の仲間たちとーーー
未来に棲む 子供たちへ
と
そして最後に
大林宣彦監督のサインとともに、
このような一文で締めくくられます
未来の子供たちよ、ーーー
今も元気で暮らしていますか?と
本作は2007年6月23日に公開され、その10年後の2017年に大林宣彦監督は余命宣告を受け、そして2020年4月10日にお亡くなりになりました
本作の13年後のことでした
つまり本作は大林宣彦監督のさよならの挨拶だったのです