図鑑に載ってない虫 : インタビュー
ふせえりインタビュー
「“脱力系”とか言われてますけど、三木さんってすごく真面目なんですよ」
――チョロリは年齢、職業、性別さえも不詳という不思議なキャラクターですが、演じてみてどうでしたか?
「チョロリは一応女性なんですよ。どうやって生計立てているか分からない人なんだけど、定職につかず好きなことをやっているのには憧れますね(笑)」
――チョロリは角刈りの頭にかん高い声という個性的なキャラクターですが、そういう設定はご自身が考えたのですか?
「髪型については元々脚本に『角刈りのチンピラ』と書いてあったんです。声は自分で編み出しました。みんなの前で披露したら『いいんじゃない』って言われて(笑)」
――物語は終始ギャグの応酬で進んでいきますが、お気に入りのシーンは?
「“じじいをくすぐる仕事”のシーン。チョロリがじじいをくすぐっているだけなんだけど、ずっとくすぐってると死んじゃうから、ちょっと休憩入れたりしてね(笑)。そんな仕事をしてるチョロリが可笑しいですよね。多分、お金をもらって大学教授なんかをくすぐってるんだと思いますよ」
――ふせさんは舞台時代からずっと三木作品の欠かせない存在ですが、三木監督の魅力は何でしょうか?
「“脱力系”とか“ゆるい”とか言われてますけど、三木さんってすごく真面目なんですよ。真面目なゆえにずっと突き進めて行った結果がゆるくなっちゃったんだと思う。私たちはゆるいとは思いませんけどね。それと、三木さんって普通だったらあり得ないようなことに出くわしてるんですよね。この間は『新宿の街を歩いていたら骸骨の人体模型を持ったおじさんと娘が歩いてた』と言ってましたしね(笑)。そういうのも才能だと思うし、いつも真面目に面白いことがないか探してるんでしょうね」
岩松了インタビュー
「面白さを出すために、細かいところでこだわりますね」
――最初に「図鑑に載ってない虫」の台本を読んだときの感想は?
「実はあまり覚えていなくて、同時期に撮っていた『転々』(三木監督、オダギリジョー主演の新作/11月公開予定)と混同してしまうんですよね。この前オダギリ君と『図鑑』の話をしていたら、『出てません』って言われました(笑)」
――演出家としても有名な岩松さんから見た三木監督の演出を見ると、どう映るのでしょう?
「まず細かいです。色々なことにかなりこだわりますね。映像のときにはロケ場所にすごくこだわって、場所や美術などかなり固めてから役者に動いてもらうっていうスタイルで、自分としても学ぶべきところはあるなあと思いますね」
――三木作品には個性的なキャラクターしか出てこないんですが、その設定も細かいのでしょうか?
「キャラクターの設定よりは、そのときのギャグであったり、台詞回しが細かいですよね。面白さを出すために、細かいところでこだわりますよね。アドリブもほとんど無しで、リハーサルでそのシーンごとの面白さを把握してから本番を撮っていきます。『時効警察』でも三木監督以外の演出家の場合は結構勝手にアドリブを入れてしまうんですけど、三木監督のときはしませんね。三木さんは割とシナリオ通りにやって欲しい人だと思います」
――三木演出、三木ワールドの魅力は何でしょうか?
「脱力系っていわれてるんでしたっけ? 人間関係をあまり突き詰めないで、話を運んでいくっていうのが特徴じゃないでしょうか。通常は人間同士が火花を散らして、どうしたこうした惚れた張れたっていうことを道標に話が進んでいくんですが、そういうことは一切無く話が進んでいくんです」