憑神のレビュー・感想・評価
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限りある命であればこそ、死によって輝き放つ
映画「憑神」(降旗康男監督)から。
主人公の下級武士・妻夫木聡さん扮する、別所彦四郎に、
貧乏神、疫病神、死神の3人の神が憑く。
それぞれの神が、面白いフレーズを残している。
貧乏神は「神は死にません、いや、神は死ねません」
疫病神は「そんな気まぐれ、神に許されるわけありません」
そして死神は「死ぬお膳立てを作るのが、あたいらの仕事で、
自分で手をくだしちゃいけないの」・・
そういえば、映画「死神の精度」((筧昌也監督)で、
「死神は『死に値する生き方をしたか』を判断するだけ」という
フレーズを取り上げたことを思い出した。
今回の「気になる一言」は、
可愛い子役の死神と、主人公・別所彦四郎との会話の一部から。
「死神のお前に出会って、初めてわしは自分が何をすべきか、
生きる意味を捜し求めるようになった。
神にできぬこと、人は出来るということ・・
それは『志のために死ぬこと』だ。死ぬことがあればこそ、
命を懸けて何事かを成し遂げようという意思を持つことが出来る。
限りある命がはかないのではない。
限りある命であればこそ、死によって輝き放つこともできるんだ」
そんな悟ったような台詞の後、子役の死神が呟く。
「ふ~ん、そうなったら凄いね」
私も同じことを思った。「そうなったら凄いよなぁ」
映画に罪はないが、浅田次郎よ、恥を知れ!
本作の製作の筆頭に名を連ねる東映は、かつて、そのアグレッシブな姿勢(と、「儲かれば良い」という羞恥心なきガッツキぶり←褒めてます)で「飢餓海峡」や「仁義なき戦い」、それから「県警対組織暴力」に「新幹線大爆破」など、数々の傑作を生み出した映画会社だが、近年は他社の後塵を排し、箸にも棒にも引っ掛からない、退屈極まりない映画を量産しまくる会社に成り下がってしまった。だが、本作は、西田敏行(最高!)や夏木マリ、それから香川照之ら芸達者なベテランの活躍もあってか、なかなか楽しめる1本になっている。
が、やはり芸がある人と無い人での差が激し過ぎるのが問題。主演の妻夫木も奮闘しているとは思うが、時代劇なのだから、せめて月代を剃ったカツラをかぶるくらいの覚悟が欲しかった。
まあ、さんざんけなしたが、それなりに楽しめる1本ではある。が、しかし、原作者に配慮したと思われるラストが後味悪い。あのシークエンスだけで、この映画の価値は下がってしまっただろう。浅田次郎よ恥を知れ!
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