「ソーッファミソファミレ♪ソーッファミソファミレ♪ドレミファソーラファ、ミ・レ・ド♪」ハンニバル・ライジング kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ソーッファミソファミレ♪ソーッファミソファミレ♪ドレミファソーラファ、ミ・レ・ド♪
重い、痛い、悲しい・・・残酷な犯罪者の生い立ちを見せつけられるビギニングモノだとばかり思っていたのに、これほどまで心臓を掴まれるような息苦しい気分にさせられた。サスペンスやサイコ・スリラーなどといったジャンルなどは決して当てはまらない、復讐劇プラス反戦映画だったんじゃないかとも感じられた。しかし、アンチヒーローとしてのハンニバル・レクターを愛してやまない人には受け入れられないだろうし、もちろんどんでん返しを期待するようなミステリーファンには向かない。むしろ三部作を良く知らない人向きの映画かもしれない。
個人的には、人肉を喰うという知的な精神異常者のイメージ(?)があったハンニバルでしたが、リトアニアにおける第二次世界大戦の悲劇や愛する家族を残酷な形で失うという幼少期のトラウマ、冷静沈着な復讐鬼として育つ青年期、恨みを仕事人に依頼することなく自分で決着をつけるというスマートさが印象を変えてしまいました(キアヌ似のためか?)。また、日本刀や拳銃だけでなく、医学の知識による必殺方法などはアンソニー・ホプキンスのような知的な犯罪者の片鱗を見せていたかもしれません。
結果的には彼の手助けをしてしまう叔母のレディ・ムラサキ(コン・リー)や、戦争犯罪人を恨んでいるポピール警視(ドミニク・ウェスト)。共に戦争で家族を失うという二人の境遇も無意識にハンニバル(ギャスパー・ウリエル)が死刑台に送られることを阻止していたようにも思えます。レディ・ムラサキなどというヘンテコな名前でしたが、男だったら思わずコン・リーに惚れてしまいそうになるほど良かったです。
反戦映画として観るならば、一方的なハリウッド的ナチ批判でもないし、原爆の批判だってしているように思えるし、戦争そのものが人間を残酷な動物にしてしまう諸悪の根源であるような描き方でした(この辺りはアメリカでは評価されないと思う)。人肉を喰うなんてのは『ゆきゆきて、神軍』まで思い出しちゃいました。もちろんグロ映像もあるR15作品なので、鑑賞時には注意しなければなりません。また、人間ハンニバルに注目するならば、愛とは無縁の残忍な男になったことの悲しみがムラサキの目を通してズシリと伝わってきます。泣けた・・・ですよ。
残忍な逃亡兵たちが口ずさんでいた曲。ハンニバルが彼らと対峙するたびに口ずさんでいた曲。映画ではタイトルが「森の中に独りぼっち」と紹介されていましたが、あるところでは「池の雨」と説明されています。このメロディだけは一生忘れませんよ・・・ヤマ○音楽教室のTVコマーシャルを見るたびに思い出したりして・・・