「【”苦悩と決断の英国女王のスピーチ。”今作はダイアナ元皇太子妃急逝により、伝統を守る英国王室に向けられた国民の声に苦悩しながらも毅然とした態度を貫いたエリザベス二世の姿を描いた物語である。】」クィーン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”苦悩と決断の英国女王のスピーチ。”今作はダイアナ元皇太子妃急逝により、伝統を守る英国王室に向けられた国民の声に苦悩しながらも毅然とした態度を貫いたエリザベス二世の姿を描いた物語である。】
ー 私は、英国王室の人々を描いた映画が好きである。
エリザベス二世の父であるジョージ六世が吃音を克服し第二次世界大戦時に国民を鼓舞するスピーチが感動的な「英国王のスピーチ」を観た後に「ダイアナ」「エリザス一世」シリーズ。「スペンサーダイアナの決意」etc.を観て来た。
で、漸く今作を観れたわけであるが、今作は当時の映像をふんだんに織り込みつつ、新首相になったばかりのトニー・ブレア(マイケル・シーン)からのアドバイスを受け、伝統的な考えと国民の思いの狭間で葛藤するエリザベス二世の姿を、抑制した演技で名女優ヘレン・ミレンが見事に演じている作品であった。-
■1997年8月。
チャールズ皇太子(アレックス・ジェニング)のカミラ夫人との不倫問題などが原因で彼と離婚したダイアナ元皇太子妃が恋人とされていた大富豪ドディ氏の車がパパラッチに追われる際に事故に遭い、巴里で急逝する。
英国国民の関心は一斉にエリザベス二世に向けられたが、民間人となった彼女の死に女王のコメントは必要ないと判断した彼女は”内輪の葬儀”で済ませようとする。だが、マスコミに煽られた民衆の英国王室への不信感は急激に高まり、女王は窮地に追い込まれてしまう。
だが、労働党の新首相になったトニー・ブレアは、若きときから英国女王として威厳を保ちつつ国民を想う彼女に敬意を払っており、彼女に対しアドバイスをするのであった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤は、ダイアナの事故の報を受けても、静養地であるバルモラル城で悲しみに暮れる孫二人(もちろん、現ウイリアム皇太子とヘンリー王子であるが今作ではほぼ映されない。)を気遣ってか、エリザベス二世はバッキンガム宮殿には戻らない。
・真相はハッキリとはしないが、一般的には民間人になったダイアナに対しての確執があったという説が多い。今作ではジョージ六世の妻のクィーン・マザー(皇太后)(シルヴィア・シムズ)が、”ダイアナはもう、私達とは関係ないわよ!”と言う感じで映される。
又、フィリップ殿下(ジェームズ・クロムウェル)も、鹿狩りに行ったりしている。喪に服すという雰囲気は感じられない。
だが、英国民はダイアナを失った悲しみを、反旗も掲げずに、バッキンガム宮殿に戻らない王室に対し、その矛先を変えていくのである。
・その報を受け、最初は冷静に見ていたエリザベス二世が、表面的には平静を保ちつつ内面では葛藤する様をヘレン・ミレンが魅せる。
印象的なシーンとしては、お供を連れず一人でジープを駆って野に行く所であろう。彼女は浅い河を渡ろうとして、ジープの前輪のシャフトを折ってしまうのだが、救助を待つ間に大鹿を視て”逃げて!”と言うシーンである。
あの大鹿は、英国王室を象徴しており、彼女がバルモラル城に戻ると、その大鹿が猟師により撃たれて、王室の食材として届けられているのである。
彼女はそれを見て、ブレア首相のアドバイスを聞き入れ、バッキンガム宮殿に戻り、国民と直接会い、国民の表情を確かめた上で毅然とした態度でスピーチを国民に向け行うのである。
・個人的な意見であるが、ブレア首相は、チャーチルに次いで功績を残した首相だと思っている。後年出て来たポリス・ジョンソンと比べれば月とスッポンである。
今作でも、革新派の妻が王室に対し、辛辣な言葉を口にしても、ブレア首相は静に窘めているのである。
<そして、年は流れ、ブレア首相が初めて謁見した時以来、訪ねて来て二人は庭に出て旧知の仲の様にイロイロと話しをするのである。
今作はダイアナ元皇太子妃急逝により、伝統を守る英国王室に向けられた国民の声に苦悩しながらも毅然とした態度を貫いたエリザベス二世の姿を描いた物語なのである。>
