「これは英国産の上質な実話ドラマだ。」クィーン 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)
これは英国産の上質な実話ドラマだ。
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ダイアナ妃の悲劇的な事故死から、王室の危機に直面した女王エリザベス2世を描いた実話ドラマ。ダイアナ妃やカミラなど、一部は実在の人物のアーカイブ映像を使っている。
エリザベス2世を演じたヘレン・ミレンが、圧倒的な存在感で、これは彼女の映画と言っても過言じゃない。トニー・ブレア夫婦もそっくりだが、マイケル・シーンはこれ以前にも、テレビのほうで、2回ブレアを演じてるんだよね。
本作では、王室の危機を乗り切る上で、トニー・ブレア首相の関わりを、思いのほか大きく描いている。しかもブレアについて、王室を尊重し、女王を敬愛しつつ、国民の声の代弁者として、女王に物申すキーパーソンとして描いている。
英/仏/伊の合作だが、英国のグラナダ・プロダクションが製作に参加してるせいか、英国ドラマで見た覚えのある面々が脇を固めていて、みんな手堅い演技で、本作を引き締めてる。
英国の王室とダイアナ妃がなんでこうなったのかとか、なんでそんなにパパラッチに追われる存在になったのかとか、どうしてダイアナ妃の死去で世界中の人々が嘆き悲しんだのかとかなどは、劇中では触れていない。
このため、本作の時代をリアルタイムで経験していない世代とか、当時はあまり興味無かったとかいう方々は、ちょっとピンと来ないかもしれない。そもそもの当時の状況や背景知識について、鑑賞前に予習したほうが良いかもしれないね。
上品なおかしさや、気の利いたやり取り。女王の毅然とした態度と、その裏の孤独には、一抹の哀愁を感じずにはいられない。
悲劇的な事故に直面しつつ、国を抱える存在としての生き方を、決して煽情的に走らず、上質のドラマとして紡ぎあげた、感動的な傑作だ。
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