「厳しい現実を情け容赦なく突きつけてくる秀作」ツォツィ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
厳しい現実を情け容赦なく突きつけてくる秀作
総合:85点
ストーリー: 80
キャスト: 80
演出: 90
ビジュアル: 70
音楽: 85
出口の無い貧困。蔓延するエイズ。日常的な暴力と犯罪。毎日50人が殺されるともいう、世界最悪の犯罪国家の一つである南アフリカ。そんな現実を容赦なく突きつけてくる。彼らにとって金を稼ぐとは、盗みや強盗に他ならない。この世界を目の前にして、真面目に働こうとか、努力すれば報われるなんて綺麗ごとを言おうという気にすらならない。この環境の中でまともな身よりも無い少年が生きるという選択肢を選ぶことは、犯罪をするしかないのである。ここまで犯罪を本物の犯罪らしく見せる映画もなかなか他にないのではないか。それを嫌というほど見せ続ける演出に圧倒される。
だが決して犯罪ばかりを描きたい映画なわけではない。単純に幸せになったり不幸になったりすることを描く物語でもない。このどうしようもない環境で、盗み殴り殺し、汚れきったままに生きる少年の心に差し込んだ、ほんの少しばかりの人の温もり。犯罪と比較した対比が見事に表現されていた。
知らない俳優ばかりだが、主人公の他にも友人やら障害者の物乞いやら近所の若き未亡人やら、みんないい存在感を示していた。
もう一つ良かったのが音楽。アフリカらしく時に陽気に激しく、時にはしんみりと響いてきた。
コメントする