劇場公開日 2007年4月7日

13 ザメッティ : 映画評論・批評

2007年4月3日更新

2007年4月7日よりシネセゾン渋谷にてロードショー

新人監督らしからぬ腰の据わった語り口

画像1

75年グルジア生まれのゲラ・バブルアニ監督が、移住先のパリで完成させた長編デビュー作である。業界に何のコネもない彼がまず資金集めのため私財をはたいて撮ったのが、本作のハイライトとなるロシアンルーレット・シーンだ。

薄暗い部屋に集った13人のプレーヤーが円を描くようにして並び、それぞれ前方の男の後頭部に実弾入りの銃口を向ける異様な光景。バブルアニ監督はコントラストの強いモノクロ映像を採用し、血をまったく見せることなく、ツキに見離された人間が“呆気なく”死亡する様を映し出す。さらにこの非情なロシアンルーレットの進行役を務めるコワモテの男は、整列した参加者に弾をこめたシリンダーを回転させ、「電球が点灯したら撃て!」とシステマチックに指示を下す。容赦なく迫ってくる発砲の瞬間へのカウントダウンに、観ているこちらは極度の緊張を強いられっぱなしだ。しかもこれをたったひとりの勝者が決するまで、勝ち抜き方式で数ラウンド繰り返すのだから恐ろしい。

このロシアンルーレット・シーンだけでも見逃し厳禁だが、この場面の前後の描写にも観るべき点が少なくない。例えば、海辺の一軒家で屋根の補修工事をしていた主人公が、一通の封筒を手に入れ、電車やタクシーを乗り継いで移動していく序盤のシークエンス。この時点では主人公も私たち観客も、行く手に何が待ち受けているのかさっぱりわからない。やがてその居心地の悪い曖昧さは不安へと変わり、“死のギャンブル”の会場となる森の屋敷に至るや、ついに具体的な恐怖へと転換する。その腰の据わった語り口の妙に唸るほかはない。

そして新人監督が若さに似合わぬ無常観をこめて描き上げたこの映画は“死の恐怖”に加え、“運”というもうひとつのテーマを探究している。13という最悪の番号を引き当てた青年は、ありったけの運を絞り出し、奇跡的なハッピーエンドをたぐり寄せることができるのだろうか。運命のラスト・カットまで目が離せない。

高橋諭治

Amazonで今すぐ購入

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
「13 ザメッティ」の作品トップへ