「それでも貴女は、ダイヤが欲しい?」ブラッド・ダイヤモンド mori2さんの映画レビュー(感想・評価)
それでも貴女は、ダイヤが欲しい?
『給料の3か月分…』『ダイヤは愛の証…』お決まりのキャッチフレーズが、幾つも浮かぶ宝石の王様・“ダイヤモンド”。しかしこの映画は、ダイヤに対するそんな歯の浮いた言葉や考え方を根底からひっくり返してしまいます。観終った後に、とてつもない衝撃を味わうトンでもない映画です。
『ダイヤを巡る、アクション・サスペンス的な映画なのかな…』程度の軽い(間違った)予備知識を抱えて観に行った吾輩がバカでした。とてつもなく重い、“社会派サスペンス”映画。しかも“一級品”です。何より驚かされたのが、この映画のような出来事(ダイヤの闇取引・奴隷同然のダイヤ採掘の人足・反政府組織による、少年兵の育成etc…)が、つい最近(映画では10年チョット前)まで行なわれていた(いる?)ということです。ハッキリ言って、まったくそんなことは存じておりませんでしたし、とてつもない衝撃を喰らいました。ダイヤモンドを見る目が確実に変わりました。
“社会派映画”と書きましたが、“娯楽映画”として観ても非常に素晴しい出来で、2時間23分という上映時間が、全く長いとは感じられませんでした。吾輩、エドワード・ズウィック監督の映画は昔から大好きなのですが、今回もハズレなしでございます。そして、主要キャストの3人が、これまた素晴しい!特にディカプリオの演技は、特筆モノだと思います。この映画より、断然イイ!これなら、アカデミー主演男優賞あげてもよかったんじゃないか?とさえ思いました。そしてジャイモン・フンスーが演じた“アフリカ黒人の悲劇的現実”。これは彼でないと演じられなかったでしょう。正に適役です。更に“オスカー女優”・ジェニファーが、男たちの物語に、内に燃えるような思いを抱いた正義を象徴する存在となる女性を、凛として清楚に演じています。これまた貫禄です。
単なるスター映画ではなく、非常に重いテーマを扱っている映画です。我々が普段イメージしていたダイヤモンドの華やかな部分が、音を立てて崩れていきます。この映画を観て尚、貴女は『ダイヤが欲しい』と言えますか?