「美しいものは、血塗られている。」ブラッド・ダイヤモンド 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
美しいものは、血塗られている。
2007年アカデミー賞5部門(主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)、助演男優賞(ジェイモン・フンスー)、編集賞、音響効果賞、録音賞)ノミネート作品。
1999年、アフリカ・シエラレオネが舞台。反政府組織RUFに拉致されダイアモンド採掘場での労役を強いられていたジャイモン・フンスー演じるソロモン・バンディが巨大なピンクダイアモンドを見つけたことを、不運な出来事から同じ刑務所に入れられていたダイアモンド密売人のレオナルド・ディカプリオ演じるダニー・アーチャーが小耳に挟み、そのピンクダイアを何とかモノにしようとするところから、話は動き出します。まぁ、これだけの事を、ただ文字で見ると、何のことは無いような気がしますが、その背景にあるシエラレオネの政府軍と反政府組織との紛争が絡んでくることから、話は一気に血生臭い内容になって行くのですけどね。
ダイアモンドは、つい近頃まで、デ・ビアスにより一般市場をほぼ独占されていました。そのデ・ビアスが始めた『A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)』と言うコピーは、世界でも最も成功した商業宣伝の一つとして有名です。でも、その”永遠の輝き”を維持するために、一種のカルテルを構成して、ダイアモンドの価格を高値に維持させていたことも事実。閉鎖的な市場形成を非難され、多数の裁判などを起こされたことで、デ・ビアスによるダイアモンド市場の支配は、今は一応なくなっていますが、ダイアモンドの高値政策は形を変えて今も維持されています。その高価なダイアモンドを密売することで、反政府組織が武器を入手し、紛争を激化・長期化させていたというのが、この映画の背景です。また、アフリカで反政府組織と政府が対立し、紛争が起きることは、結構目の当たりにするのですが、人民を解放するといっている反政府組織が、その人民を拉致し、労役で酷使し、子供を少年兵に仕立て上げてしまうと言うのは、何とも皮肉な話です。この映画でも、そのあたりの矛盾が描かれています。
中々、重いテーマの映画です。見終わってみて、ディカプリオが、『ディパーテッド』では無く、こちらで主演男優賞のノミネートになった理由がわかる気がします。『ディパーテッド』よりこちら作品の方が、はるかに良い演技をしています。ジェイモン・フンスーも、子供を反政府組織に奪われた父親を非常にうまく描いています。その子供は、少年兵になってしまっているのですが、少年兵と言うのは、本当に人権を蹂躙する非人道的な事ですね。まだ世界には20万人の少年兵がいるそうです。
女性に光物をねだられている男性諸君。女性にこの映画を見せて、「ダイアモンドを買うことは、アフリカの人々を搾取し、苦しめることである。」と言うことを納得させ、諦めさせましょう(笑)。