ブラッド・ダイヤモンド : インタビュー
ゲリラ組織や密輸業者らによって違法に売買され、内戦の武器購入の資金源ともなっている“紛争ダイヤ”の問題を、「ラスト・サムライ」で日本人が失いかけていた侍魂を描いたエドワード・ズウィック監督が映画化した社会派エンターテインメント「ブラッド・ダイヤモンド」。アカデミー賞にも5部門でノミネートされた本作について、監督本人に語ってもらった。(聞き手:編集部)
エドワード・ズウィック監督インタビュー
「取材をするときは、真実の状況というものを理解することが大切だ」
――アフリカのダイヤモンド紛争問題については、いつからリサーチしていたのでしょうか?
「シナリオを書くのに6カ月くらいかかったね。しかも、書いている間もアフリカやヨーロッパに足を運び、色々な人に会って話を聞いたり、ジャーナリストたちが命を賭けて書いた文献、そして、西欧の世界ではあまり出回っていない、撮影するのがとても危険だったと思わせるようなドキュメンタリー映画なんかを独自に手に入れたりして、リサーチしたんだよ」
――レオナルド・ディカプリオが演じたジョン・アーチャーのモデルになったような人には会ったことがあるのでしょうか?
「色々な人々に会ったけど、南アフリカの防衛軍に入っていたような人や、アフリカ各地で戦ったことのある傭兵たちを取材して、彼らのもっているエッセンスを混ぜ合わせて1人にしたのがジョン・アーチャー、レオのキャラクターなんだ」
――ジャーナリスティックな題材の作品を撮ることが多いですが、シナリオを作るときのドラマと事実のバランスをどのようにとっているのでしょうか?
「私のキャリアはもともとジャーナリストで始まっているんだ。最初はカルチャー雑誌のローリング・ストーンで書いて、そのあと、ニュー・リパブリックという政治雑誌の編集をやっていたんだ。そのときに非常に大事だと感じたのが、しっかりと宿題をすることなんだ。取材するときに、色々なことをしっかりと聞き出して、真実の状況というものを理解することを学んだんだよ。それと同時に、私は演劇の勉強もしていて、ドラマを作る人間として、キャラクター設計から物語の構成、人物描写を学んでいた。だから、常にストーリーの中で、何が信じられることか、そしてどこまで作ってしまったら、信じられなくなるか、その境界線に気をつけながらドラマを作っているんだ」
――これまでにデンゼル・ワシントン、ブラッド・ピット、トム・クルーズなどのハリウッドを代表するスターたちと一緒に仕事をされていますが、レオナルド・ディカプリオと前述のスターたちとの違いはなんでしょう? またレオが以前と比べて成長したところはどこでしょうか?
「俳優はそれぞれ違うものを持っているし、必要としているものもそれぞれ違う。プロセスも違うし、私との関係や経験も違う。だから、私はその俳優の持っているもの、必要としているものを理解しなくてはいけないと思っているんだ。俳優によっては、大きな挑戦が必要で、こちらでエンジンをかけてあげて、押してあげる必要のある人もいれば、とにかく知的な会話が必要で、理解しながら演技をするというタイプもいる。また、別のタイプで、リアルな世界の空気をこちらが作れば、あとはその中で自由に演技が出来るタイプがいる。レオはまさにこのタイプで、彼は我々が作ったこの映画の背景、空気の中で自由に演技をしていたよ。彼は恐らくこの10年間、このようなタイプの映画に出るために、ずっと待ち続けていたんだと思うんだよ。男が30歳を迎えると、男としても、俳優としても成熟期に入るけど、俳優はそこで良い役に巡り会うかか勝負の決め手で、ちょうど30歳前後でそういう作品に出会って開花したのが、ポール・ニューマン、スティーブ・マックィーン、ラッセル・クロウたちなんだ。レオはそういった意味で一番良い時期にいるといえるね」
――この21世紀に入ってからのアメリカはとても重要な局面を迎えていますが、21世紀に入った今、なぜにアメリカの外を描いた映画(「ラスト・サムライ」「ブラッド・ダイヤモンド」)を撮っているのでしょうか?
「まず、今までのアメリカっていうのは、アメリカ以外にはまったく興味を示さなかった。ここ数年で、今のアメリカには2つ現象があると思うんだけど、ひとつは、アメリカ以外に世界があるということを、しっかりと認識しだしたこと。そして、もうひとつはアメリカの映画業界自体が非常に国際的になり、国内マーケットだけでなく、国際マーケットが非常に重要になってきたということなんだ。私は以前から、アメリカ以外の世界に興味を持って生きてきたので、そういうアメリカ以外の映画が作れるようになった今のハリウッドは、とても良い時代だと思うんだ。これは確実にアメリカの観客も変えると思うし、アメリカ以外の国で製作された映画もアメリカにどんどん入ってくるんじゃないかな」