「巡礼の旅」サン・ジャックへの道 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
巡礼の旅
3人の兄弟が徐々に打ち解けていくという映画かと思っていたけど、そうではなかった。他の巡礼参加メンバーであるアラブ系の高校生2人と女子高生2人、そしてワケアリ女性とアラブ系のガイド、計9人による群像劇風ロードムービー。フランスから聖地サンティアゴ(サン・ジャック)までの巡礼の旅。特に文盲であるアラブの少年のエピソードがとてもよかったなぁ。
何がよかったのか・・・南仏の田舎の風景はもちろんなのですが、かなり重そうな荷物を背負っての過酷な旅。そのためか、最初は遠慮がちだった登場人物にも愚痴や本音トークが炸裂していたことでしょうか。本音といえども、隠すところは隠す。けれど、次第に打ち解けて、大切な部分では家族同然のように振舞っていたところ。中には恋愛に走っていた人もいましたが・・・
巡礼といえば、普通は宗教が絡んでいると思われるところもミソ。参加メンバーはほとんど無神論者であり、イスラム教徒(熱心ではなさそう)であろうが、キリスト教教会に寝泊りする。神父が人種差別主義だったりすると罵倒したりするのです(言葉は通じてなかったようだけど)。
歩くだけというシンプルな構成であるけれど、自然の雄大さと各人の夢を織り交ぜたりして、幻想的な一面も見せる。そして、皆個性的な登場人物であるものの、旅を通してどこか社会的人間になっていく様子や、都会の喧騒を離れ逞しくなっていく様子は観客に勇気を与えてくれるような気もする。彼らが本当に大切なモノに気づく姿を見たときには暖かな涙さえ流れてしまいます。
『夜のピクニック』では最低点をつけてしまいましたけど、どこがどう違うのか・・・子供版と大人版の違い?それだけではないはずです。
【2007年9月映画館にて】