絶対の愛 : インタビュー
00年ベネチア映画祭で「魚と寝る女」を見て衝撃を受けて以来、キム・ギドク監督とは作品のたびに取材するチャンスに恵まれてきた。人間本来がもっているエキセントリックな心理を暴き出す天才的な話術に、いつもながら戦慄をおぼえるのだが、今度の新作「永遠の愛」もまた“美容整形”と“究極の愛”をモチーフにした、ギドク・ワールド全開の愛の寓話になっている。韓国映画界の異端児に、創作の秘密などあれこれを聞いた。また、ギドク監督の貴重な絵コンテも公開!(聞き手:佐藤睦雄)
キム・ギドク監督インタビュー
「ただただ映画を撮っていきたい。映画しかありませんからね」
──美容整形をモチーフにしたワケは?
「日本でも知られているとおり、韓国は整形する人が多い。韓国内では道徳的に正しいか、論争になっているほどです。好みの顔かたちはみんな欧米風の顔なんですね。これをモチーフとして愛の物語を思い立ちました」
──原題の「時(Time)」が意味深なラストを暗示しますが、エンディングを最初に考えてから、シナリオを書き始めたのですか?
「シナリオを書くのにいつも2~3カ月要します。今回はその作業のちょうど真ん中あたりに、このエンディングを思いつきました。いつも途中で別のストーリーを思いついてしまうんですが、今回もそうなりましたね」
──途中まで考えていたストーリーは?
「最初のストーリーは、女性だけが美容整形をして、男性は彼女を見つけられなくなるというものでした。そのあと手を加えて、男性が美容整形して、女性がさらにもう1回して、絶対に会えなくなるという物語にしました」
──前の顔の写真を仮面にして、女が男と会う場面はえぐかった。
「ものすごく悲しい話ですよね。顔を変えれば、新しい自分を好きになってくれると思っていたのに、男は元の自分を忘れていない。過去の自分になりすまして、男に手紙を送って会いますよね。ところが昔の顔を取り戻せないので、昔の写真を拡大コピーして仮面のようにかぶります。あのシーンは過去と現実の2つの顔をこれならいっぺんに見せられるだろうと、周到に考え出したアイデアです」