「イナバウアーキス!未遂・・・」夏物語 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
イナバウアーキス!未遂・・・
ビョンホン様ではあるが単なる純愛物語じゃないと思う。社会背景が1969年の韓国軍事独裁政権下ということもあって、日本では知る術もない当時の状況。学生たちは軍事政権の三選阻止を願ってデモを起こしたり、そのおかげで大学は休校になったりと、当時の日本と似ているといえば似ている(日本の様子もよく知らないのに・・・)と思う。そんな学生たちが農村へ奉仕活動へ出向き、ユン・ソギョン(イ・ビョンホン)が村の若い女性と恋に陥る物語。
しかし、その娘ジョンイン(スエ)は父親が北朝鮮へ逃げたということで、彼女自身もアカ扱いされている。しかし、村人の文盲率が高いため、父親が小さな図書館を建て、スパイ容疑を払拭しようと努力していたことも窺われるのです。奉仕活動も終了して皆が大学へ帰ってからが凄まじい展開。学生デモに巻き込まれてソギョンもジョンインも逮捕されてしまうが、2人だけはスパイ容疑もあるという理由で特別な扱い(拷問に近い?)を受けてしまう。2人の仲を認めてしまえば、学生の逮捕というレベルじゃなくなってしまうのだ・・・そしてソウル駅でのシーンでは、結果もわかっているのに泣けてくる・・・
電気もまだ来ていない村の牧歌的な雰囲気。時代的にも風景的にも『ラブストーリー』を思い出してしまいました。ひょうきんなビョンホンはなかなか良かったし、スエちゃんも可愛い。彼女が村人に本を読んであげるシーンで、「胸をつかむ」を「手をつかむ」に変えてしまうところが好きだ。そして、ほのぼのとしたひと夏の恋に“石になった魚”や“ひのきのカード”という小物の伏線が効いていた。
これだけいいテーマもあるのに残念なところも目立ってしまう。図書館が燃えた後の心理描写は、その直前の映画上映会の気分をぶち壊すものなのだから、もっとじっくり描いてもらいたかったし、テレビ局プロデューサーが持ってたカードもいきなり小学校へと場面が変わるのでわかりづらいし、ラストの石の魚も唐突すぎるような・・・考えればわかるのですけど、考えなくてもいいような工夫が欲しかった。
【2007年2月映画館にて】