劇場公開日 2006年8月26日

「【一途に”かの国”を崇め続けた両親と、その姿に違和感を覚える娘。だが。娘は末期の父の想いを理解し”もう一度、家族のいる平壌へ行こう。”と最後に言った。】」Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【一途に”かの国”を崇め続けた両親と、その姿に違和感を覚える娘。だが。娘は末期の父の想いを理解し”もう一度、家族のいる平壌へ行こう。”と最後に言った。】

2024年10月21日
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ー ”かの国”を崇め続け、”かの国”に息子3人を”帰国事業”で送り出した父。娘であるヤン・ヨンヒ監督は、両親と仲が良いがその点だけには、違和感を感じている。
  3人の痩せた兄の姿を見て、大量の仕送りを30年続けた母の姿。
  朝鮮総連の幹部を55年務めた父の姿。
  何故に、ヤン・ヨンヒ監督の両親は、”かの国”をそこまで崇めるのだろうか。ー

◆感想

・今作後に公開された「スープとイデオロギー」を観て、上記の疑問の一部は氷解した。

・それでも、このドキュメンタリー映画を観ると、ヤン・ヨンヒ監督の両親は、”かの国”をそこまで崇めるのかという思いは残る。
 ”かの国”で会った兄たちの家族の家での楽しそうな遣り取りとは別に、夜になると電力供給量が無いのだろうと思われる、蝋燭生活をする姿。

■この映画を観ていると、母は途中で“かの国”の事情に気付いていた事は間違いない。でなければ、大量の仕送りを30年続けられる訳がない。
 だが、父は娘には”早く結婚しろ”とは言うが、”日本人とアメリカ人は駄目だ”と笑いながら言う。
 だが、末期を迎えようとするの父の考えは変わって来る。
 娘に対しても”国籍を変えても良い”と言い、娘の優しい言葉に泣き崩れる父の姿。

<このドキュメンタリー映画を観ると、人間の思想統制の恐ろしさと共に、それでも思想が違っても親子の絆は崩れないのだな、と言う事を学ばせて頂いた貴重な作品だと思う。
 ”かの国”に住む兄たちの、妹に対する”頑張れよ。”という言葉と、妹が兄たちに掛ける”頑張って。”という言葉は明らかに意味が違うよな、と思った作品でもある。>

NOBU