父親たちの星条旗のレビュー・感想・評価
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戦争の実像と虚像のはざま
本作は2006年公開だから、硫黄島の戦いから60年以上経過し、この戦いに参加した兵士は当時20歳とするなら80歳を超え始めたということ
彼らが死んでしまえばその戦いの記憶は、写真などしか残らない
つまり虚像だけが残されるのだ
それが何を意味するのかを本作は訴えている
アメリカは第二次世界大戦から、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン戦争、イラン戦争、そして現在は対テロ戦争を戦っている
ベトナム戦争はメディアがより戦場に入って実像を伝え、戦後には地獄の黙示録を初め多くの映画がその実像に迫った
では、それ以降の戦争の実像に映画は迫っているのか、実像を伝えているのか?を本作は問うている
現代の戦争は無人機が米国本土の基地にいながらにして衛星通信の遠隔操縦、はてはAIで敵を攻撃している
そこに戦争の実像と虚像のギャップはあるのか?
さらに大きくなっているのではないのだろうか?
このような問題を本作を観た若い者にクリントイーストウッド監督は君達の仕事だと問うているのだ
だからこそ、戦場のシーンは実際と見がまう程の迫真の出来映えだ
砲弾の炸裂音は実戦を経験した兵士は打ち上げ花火にとても似ているとよくいう
それを上手く映画に取り入れて効果を上げている
字幕でニューヨークでの式典のシーンでUnited Nationを国連とでるのはいただけない
これは当然「連合国」の間違い
このような大作の字幕で恥ずかしすぎるミスだ
日本語字幕製作陣は猛省してほしい
想像を絶するような戦いだったんですね、硫黄島。教科書等で習いはしま...
想像を絶するような戦いだったんですね、硫黄島。教科書等で習いはしましたが、この映画見た方がよく分かるかもしれない。必死だったんですね、アメリカも日本も。グロい描写がそこそこあるので苦手な方は要注意。
物語は戦争そのもの以外で翻弄される兵士たちを描く。実話に基づいているようだ。こんな悲惨なこともあるんだ、戦争ってやつは…
この作品、個人的に馴染みの俳優がおらず、正直誰もが薄い印象。序盤は誰が誰か分からず、ようやく分かりかけた時には、もうストーリーが相当進展してしまってた感じ。一番分かりやすい先住民は差別受けまくり。ここにもアメリカの闇が垣間見える。
いろいろと考えさせられる見て損のない作品。さすがはイーストウッドってとこか。
銃後と前線の間で
どこから来るともしれない銃弾や白兵戦を挑んでくる敵兵によってあっけなく惨たらしい死が訪れる戦場と、 日常が繰り返される米国本土との間で映画は揺れ動く。そのどちらも3人の兵士には過酷だった。戦時国債を売る広告塔として強いられる虚偽に精神がむしばまれていく姿は、特にアイラの描写で胸が痛む。アルコールへの耽溺、容赦なく浴びせられる差別的言辞などは目をそむけたくなるほどだった。
その後の3人の結末はそれぞれであるが、ひたすら物悲しい。浜辺のシーンはせめてもの救いのように見えるが、その後に続く写真は現実とのつながりを再確認するもので、心に重いものを残す。
戦時国債の話で意外だったのは、物量豊富な米国はその引き換えに
財政がひっ迫していたということ。第二次大戦時に財政赤字は対GDPで30%にも達していた。なんとなく財政的にも余裕があったというような印象があったが実際はそうではなく、本作品の物語の背景をなしている。
なお、二回目の写真に写っていたのは”ドク”ではなく別の兵士であったと2016年には公式に訂正されている。そのことを踏まえるとより”ドク”の心中がより慮られるのである。
イーストウッド監督の戦争映画・・
この作品は、アカデミー賞を受賞したイーストウッド監督による戦争映画の名作。二部作である。アメリカ側の立場から本作品。日本側の立場から「硫黄島からの手紙」がある。まるでノルマンディ上陸作戦を思わせる硫黄島への上陸作戦。水陸両用車から次々とアメリカ兵士が上陸して、トーチカで待ち伏せする日本兵と激しい戦闘をする。余りにも過酷な戦闘シーン・・太平洋戦争がいかに残虐であったか!?そして硫黄島の摺鉢山に征服の証のアメリカ星条旗を兵士たちが立てる。ネタバレになるので後は・・戦後60年のアメリカ映画。明るい作品ではないが、2006年の戦争について深く考えさせられる作品。週刊文春「シネマチャート」洋画87位。
アメリカと日本とで、戦争に対する姿勢は大きく違う
日本人とアメリカ人では全く戦争に対する捉え方が違う。優勢、劣勢もあるとは思うがアメリカでは戦争はビジネスとしての意味合いが強いのだと思う。
硫黄島での星条旗を掲げた有名な写真が実はあの旗は2本目であるとか、戦いが終結してからたてたものではないとか、本当はこの人は写真に写ってないとかどうでも良いことの方に戦死者のことよりも関心がいってしまうアメリカ人の感性に疑問を感じた。いくら身内が死のうと、これまでの幾多の戦争でどれだけ犠牲になった兵がいようと、アメリカンスナイパーで取り上げられたように戦争が終わって帰国後にPDSDに悩まされ自殺する人がたくさんいる現実があっても戦争を支持し続けるアメリカはなんて非情な国なんだろう。
戦争は優勢な立場にいて勝つことができれば経済的に凄く良い。アメリカは戦争をしたら自分達が優勢にたてるという確信から戦争に介入し続けてきている。
無実の同国の人間を殺したら、犯罪者。無実の敵国の人を殺したら、英雄。アメリカ人がその矛盾に気づく日は来るのだろうか。
「硫黄島からの手紙」と「父親たちの星条旗」の両作品を観て戦争を肯定することができなくなった。
『硫黄島からの手紙』のほうがわかりやすくて良かった
総合:70点 ( ストーリー:65点|キャスト:70点|演出:75点|ビジュアル:80点|音楽:65点 )
思いっきり戦争の話かと思いきや、突然本国で国家の宣伝に利用される兵士の話になってしまう。この茶番劇が薄っぺらで、いやそれは映画のことではなくて国家が演じる茶番劇が薄っぺらで、観ていてくだらないと思って途中で退屈もあった。作品の質が低いわけではないけれど、戦争そのものを正面から描いた『硫黄島からの手紙』のほうがわかりやすいが、こちらは主題が地味で観ていて楽しくない。戦闘場面の描写がなかなかの迫力だったので、その対比としての茶番劇が余計につまらない。
でもそのうちそのような場面を乗り越えて、戦争だけでなく国家に利用されて人生を翻弄された兵士の心の傷が分り始めた。激戦で有名な硫黄島占領作戦は、あの場所に兵士達が星条旗を立てたから勝利を掴んだのではなく、全員が総力戦で戦った勝利の結果として星条旗を立てたのである。日本軍を制圧し、たまたまそこにいた兵士が旗を立てた。現場の兵士からすれば、その部分だけを取り上げられてもそれは真実からは程遠い。戦争の現場で戦う自分と、国民の戦意高揚と国債販売のために都合よく英雄扱いされる自分との差に、苛立ち苦悩する兵士の葛藤する姿と虚しさに余韻が残る。
戦争は古より政治家が始め、若者が死ぬ。 生き残った若者ですら、政治...
戦争は古より政治家が始め、若者が死ぬ。
生き残った若者ですら、政治が社会的に殺す。
プロパガンダで国威発揚を図るのが常のアメリカ。
戦争ビジネス
戦争は国のビジネス。
兵士達は戦地では、命をかけて敵と戦わなければならない。
国に帰ってきても、戦争からは解放されず、いいように使われるだけ。
戦地の音や映像が脳裏から離れないようすは、まさに戦争で殺されたも同然。戦地に行くまでの健康な人間には戻れないのかとも思う。
正義のエゴイズム
映画評価:30点
日本の硫黄島は、兵士達がどんだけ苦しい状況で闘い、家に残してきた家族を思い、敵わないとしるアメリカに挑むシーンがメインだったのに対して
このアメリカ視点の硫黄島は政治なのだ。
勝利をおさめるのは当然だとして、いかに勝利した兵士をヒーローにしたて国債を買わせるか、経済効果を大きくできるか。
そんな感じだ。
これを見ていると日本が無謀な戦争をしていたのが痛いほど分かる。
戦争とは勝とうが負けようが痛みが伴うもので、悲しい出来事だ。
政治の一環でやる事ではないと感じた。
50年も戦争をしていない日本は偉い
私はそう思う。
【2014.12.7鑑賞】
戦争の意味を考える
「日本が負けた」映画を観るってのもなんだかなぁと思って、最初は観る気はあんまり無かったんですが、ついつい観に行ってしまいました。
この映画はドンパチアクションとかを期待したら肩すかしを食うと思います。昨今の映画にある人体崩壊もさほど無いし。
でも、見終わった後には戦闘の描写そのものには、さほど意味がないって思いました。
この映画を観て、改めて戦争の意味って何だろうと考えさせられました。
政治的な大義名分は何となく分かるし、戦略的・戦術的な勝利のために戦うってのも分かります。
でも、実際に銃を持って戦う兵士たちは、立派な指揮を執っていようが、敵を何人殺そうが、敵に殺されようが、味方に殺されようが結局、それは一個人の人生として完結してしまう。
その一方で、“たまたま旗を立てた”だけで英雄視されてしまう兵士もいる。
そして、その英雄でさえ戦争が終われば用無しとなって、クズのように捨てられてしまう……大義名分の前には、兵士個人のパーソナリティなんてのは消し飛んでしまう。
だとしたら、いったい何のための戦争……戦っている兵士にとって、何のための戦争だったんだろうか考えさせられました。
それは生き残ったオレたち(硫黄島で戦ったのは、紛れもなくオレたち日本人の先輩たちなわけである)にとっても、何のための戦争だったんだろうかという問題を投げかけているかも知れないし、そうじゃないかも知れない……まあ、それは受け取り手の判断ってことで……。
で、その“何のための戦争だったのか”の一つの考え方を示してくれるのが、これに続いて上映される『硫黄島からの手紙』なんじゃないかな、とオレ的には期待していたりします。
というわけで、『硫黄島からの手紙』も観に行かなきゃならんな~。
ノンフィクションながらイーストウッドにしか出せない味わい
流石はイーストウッド、一枚の写真の真実を描くことにしっかり腰を据えてぶれることがない。
丁寧な心情描写と巧みな演出も相変わらずだ。
「ライアン」には及ばないが硫黄島上陸の戦闘シーンもなかなかなものだ。
絡み合う時系列の異なるシーンの展開、切り替えの仕方も見事。
イーストウッド作品の多くに流れる"英雄の贖罪"を根底にもつ重厚な作品。
結局振り回されるのは下級階級
日本の砦、硫黄島に星条旗を立てた瞬間を撮った1枚の有名な写真。それにまつわる逸話を素材にした戦争巨編だ。
国は、戦をするためには大義名分を、戦を続けるためには士気を煽るようなビッグニュースを造りあげる。民衆を煽るのは、いつもひと握りの上層階級で、そういう人たちは決して銃弾の飛び交うようなところに立ったりはしない。それは今も昔も変わらない。
逸話自体は興味深く、飾り気を取り払っているが、適度な抑揚とテンポは作品を長く感じさせない。戦闘シーンは「プライベート・ライアン」の方が痛い。
エンドロールが終わるまでしっかり目に焼き付けてほしい。
硫黄島に於ける日米の激戦を脚色を交えながら綴った作品。アメリカ側の視点による描き方ときいたので、自分でも斜に構えた見方と自覚していたが、それでも輝かしい部分だけでなく、悲惨な所も描かれていて見応えのある作品。これから見る方は、エンドロールが終わるまでしっかり目に焼き付けてほしい。
印象はフェア
日本兵、米軍というこだわりなく描かれていて、印象はフェア。
ライアン・フィリップがいいなあ。カオスもよかったけれど、真面目な兵士役もいい。
硫黄島で日本兵がどんな惨状であったのか、資料や本を読んで知っているので、「硫黄島からの手紙」もぜひみたい。
いろいろな思いやりや、しがらみのある日本人では描けないところまでみせてくれるのか。期待してますイーストウッド監督、渡辺謙さん。
哀しい英雄の物語。
第二次世界大戦末期の硫黄島の攻防戦が舞台。その中でも、有名な擂鉢山に星条旗を掲げた5人のアメリカ兵に関しての、アメリカ側の視点でのその後のエピソードです。日本側の視点から描かれる『硫黄島からの手紙』が年末に公開されます。
擂鉢山の星条旗が、アメリカの厭戦気分の漂っていたアメリカの戦意高揚に役立ったのは想像を待たないが、写真に映っていた兵士たちが英雄に祭り多上げられ、戦費捻出のための国債購入キャンペーンに借り出されていたとは知りませんでした。まぁ、国の為政者が考えそうなことではありますが。英雄に祭り上げられた三人の苦悩が良く描かれており、それを通して、戦争の凄惨さを見ることが出来ます。また、英雄として扱われても差別がなくならないインディアンの無念さも良く判ります。
有名な擂鉢山に星条旗を掲げようとしている写真が、二枚目の取り直した写真であると言うのは史実です。第二次大戦にまつわるアメリカ軍の写真にはそうしたものが多く、これも有名な、マッカーサーが幕僚を従えてレイテ島に上陸しようとしている写真もそうです。これに関しては、マッカーサー本人はズボンが濡れるのを嫌がったのですが、いざ写真を見てみると勇壮に見えるので、そのまま使ったと言う話しもあります。
製作にスピルバーグが絡んでいることもあり、かの『プライベート・ライアン』で用いられた、何となくモノトーンチックな映像としてみることが出来ます。また、その経験がフィードバックされたのか、上陸シーンや戦闘シーンはかなりリアルです。また、映画のエンドロールには、実際の当時の写真が使われており、映画に出演している人物本人の写真も出てきます。
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