「硫黄島、日本とアメリカ、二つの視点」父親たちの星条旗 kazu50さんの映画レビュー(感想・評価)
硫黄島、日本とアメリカ、二つの視点
2006年、クリント・イーストウッドが「硫黄島からの手紙(日本視点)」と対になる形で、本作「父親たちの星条旗(アメリカ視点)」を手がけていたことを知り、二本目として鑑賞しました。
同じ硫黄島の戦いでありながら、視点が変わるだけで、ここまで物語の見え方が変わるのかと強く感じます。アメリカ側から描かれる戦争は、英雄の誕生と消費、そして国家による“物語化”が色濃く、前作とはまったく異なる印象を受けました。
それでも戦争の本質は変わらない。兵士たちは国のためという大義以上に、「亡くなった仲間のために戦う」という個人的で切実な動機を抱えていたことが、痛いほど伝わってきます。
そして、この硫黄島の後に沖縄戦、さらに広島・長崎への原爆投下が続いていくことを思うと、当時のアメリカの軍事的・国家的な体力がどれほど凄まじかったのか、あらためて考えさせられました。
『父親たちの星条旗』は、勝者の物語でありながら、同時に「英雄とは何か」「戦争は誰のために行われるのか」を静かに問いかけてくる作品です。「硫黄島からの手紙」と併せて観ることで、戦争の輪郭がより立体的に浮かび上がってきます。
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