エラゴン 遺志を継ぐ者 : 映画評論・批評
2006年12月19日更新
2006年12月16日より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー
これまでとは違う新たなドラゴン像の創造に挑戦
主人公のエラゴン少年と心を通わせる青きドラゴン、サフィラをどう映像化するか。「ジュラシック・パーク」シリーズのVFXマン出身の監督シュテファン・ファンマイアーが、もっとも力を注いだのはおそらくこの点。
そもそもこのドラゴンは映像化が難しい。まず、体表の色が青という生物には珍しい色なので“生物としてリアルに見える青色”を創造しなくてはならない。さらに、従来の怪物系ドラゴンとは違って人間と同等の知性を持つから、知的な風貌が必要。そのうえ、エラゴン少年とはテレパシーのように思念や感情を伝達し合うので、細かな情緒の表現も不可欠。メスのドラゴンだから、美しさや優雅さも欲しい。そのうえで“ああ、こういう生物はいるかもしれない”と感じさせる生物らしさも備えていなければならないのだ。
そこでまず、造形は西欧の典型的ドラゴン像を踏まえつつ、中国の龍、翼を持つ天馬ペガサス、上半身は鷲で下半身がライオンのグリフォン等の神話的イメージを付加。その動作には、飛行から着地した際の四肢によるスピードの減速など、物理法則を意識した演出を加味。これまでのドラゴンとは違う新たな魅力的生物の創造に挑む、ファンマイアー監督の意気込みがスクリーンに充ちている。
(平沢薫)