劇場公開日 2006年12月9日

「日本以外の世界を見てきた経験が、視野の広さに影響している」硫黄島からの手紙 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本以外の世界を見てきた経験が、視野の広さに影響している

2024年3月9日
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鑑賞方法:VOD

戦前の日本の軍人といえば、中村獅童演じる伊藤海軍大尉のように、部下を怒鳴り散らし無闇に玉砕したがる人間がステレオタイプだ。しかし栗林中将や西中佐のような、部下を大事にし、戦局を冷静に見れる人間もいることが分かる。この差が生まれるのは、栗林中将や西中佐がアメリカに居た経験が、彼らの考え方に大きな影響を及ぼしているからだろう。彼らは、当時のアメリカが日本よりも文明が発達していて豊かなのを目にしてきている。そしてアメリカ人にどのような人達がいるのかを、実際の交流を通じて知っている。インターネットも無く、交通手段も発達していない当時において、こういった経験の差が考え方に大きな影響を及ぼすことは想像がつく。

西中佐が、捕虜のアメリカ人サムの母親からの手紙を読み上げるシーンは切なくなる。戦場で戦う日本人もアメリカ人も、皆誰かが愛する子どもであり親である。彼らには人種の違い以外根本的な差は無い。それが戦争を理由に憎しみ合い殺し合う哀しさが、このエピソードに表れている。

栗林中将の考え方は、日本の軍人としての誇りを持ちつつ、できるだけ長く生き延びることにあるのが、彼の採る戦略や発言から分かる。洞窟を掘って立て籠もる戦略を立てたのも、危なくなったら部下に退却するように命じたのもそのためだ。アメリカ軍にギリギリまで抗い続けようとした。その時に考えられるベストを尽くす栗林中将の姿勢に、尊敬の念を抱いた。

根岸 圭一
琥珀糖さんのコメント
2024年3月10日

コメントありがとうございます。
本当に日本人監督なら、私情が入ってしまうかも知れませんね。
本当に視野の広い映画で、しかも日本人の気持ちにも沿っています。
さすがのクリント監督でしたね。
観てるのは辛かったですね。

琥珀糖