(本)噂のストリッパー
劇場公開日:1982年9月15日
劇場公開日:1982年9月15日
冒頭から印象的な演出が施されていました。
アバンタイトルでは、開場前のお客様への諸注意を、ストリッパーたちのシャワーシーンと楽屋の様子と重ねて描き、会場内のアナウンスとだぶらせて、彼女たち自身に言わせることで、ストリッパーたちの一体感と開場前の高揚感が巧みに表現されていました。
グロリア(岡本かおり)が袖で緊張している場面に「真夏の出来事」の音楽が流れ、客前に登場した瞬間にタイトルが入る演出は、とても洒落ていて印象的でした。さらに、タイトルバックでグロリアのストリップを見せ、曲が終わると暗転して監督名がクレジットされる流れには、監督の美意識とセンスが凝縮されているように感じられます。
ただし、ストリップのダンスについては、当時は振り付けなどが存在しなかったのかもしれません。踊り子たちは無表情で、ダンサーというよりも裸を見せるだけのショーに見えてしまいました。後半、六本木のディスコに踊り子たちが遊びに行く場面では、素人のディスコクイーン(森田日記)の方がよほど踊れており、どちらがプロなのか分からないほどでした。一方で、ステージで流れる音楽は「メランコリック」や「リンダ」「星降る街角」など、選曲が非常に良く、雰囲気を盛り上げていました。
観客とストリッパーの関係は、タレントとファンに近いものがあると思われます。そのため、グロリアと洋一(宮脇康之)の関係が素っ気ないものであっても、ある意味仕方がないのかもしれません。シェイビングクリームを胸に塗らせるステージでは、あまりにも無感情な様子に、どうしてそのような女性を好きになれるのかと疑問を抱いてしまいました。ただ、踊り子の肌に触れる演出は観客にとっては魅力的だったのではないでしょうか。岡本かおりさんの乳房は非常にセクシーに映っていました。白黒ショーや生板本番の場面では、周囲の目がある中でよく演じているなと感心しました。
グロリアとレディ(三崎奈美)は実の姉妹とのことで、姉妹でストリップをしているという事実には驚きました。レディはコンドームを着けているとはいえ、生板本番を行っており、ヒモの夫・孝政(金田明夫)との関係も描かれています。妊娠が発覚した際に、彼から中絶を求められる場面には複雑な感情を抱きました。
グロリアが突然「お金が必要だから生板本番をやりたい」と言い出す場面では、彼女に何があったのかが描かれておらず、唐突な印象を受けました。背景が分からないまま話が進むため、戸惑いを覚えます。
洋一は、ある日バイトの配達先で好子(太田あや子)と出会い、レコード針の交換をきっかけに肉体関係を持ちます。顔の好みもあるかもしれませんが、愛想のないグロリアよりも、好子の方がずっと魅力的に感じられました。そう思ってしまうのは、自分が年齢を重ねたからかもしれません。
洋一はグロリアの生板本番の相手役を務めますが、その場面も機械的で、ステージ上だけの関係に見えました。自分との行為の後に、別の男性の上でよがるグロリアを、果たして洋一は愛し続けられるのでしょうか。
洋一とグロリアの接点があまりにも少なく、ストリッパーと観客という関係性だけで物語を引っ張るのは難しいと感じられました。
この作品の後、岡本かおりさんは一般作品にも出演され、金田明夫さんや鶴田忍さんなど、後に一般作品で活躍されることになる俳優陣も出演しており、非常に貴重な作品だと思われます。