「おお音楽ジョン・ウィリアムズ」ロング・グッドバイ ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
おお音楽ジョン・ウィリアムズ
タイトル画面で思わず二度見。
ひょっとして同名の別人がいるのかしら?と思うほどに。。
数々のハリウッド娯楽映画を象徴する輝かしいスコアリングしか知らない身には、すすけたジャズのボーカル曲で始まるオープニングはあまりにも強烈。
もしやロング・グッドバイっていう既成の曲があるのかな?という淡い期待も作曲ジョン・ウィリアムズの文字でこっぱみじん。ひえぇ
そもそも、かの有名な私立探偵フィリップ・マーロウの代表作、そして映画自体も根強いファンがいる、さらにたぶん初のロバート・アルトマン監督作、ということで観る前の「一体どんな作品なんだ」感はピークに達していた。
が、ふたを開けてみるととにかく主人公の造形が独特。特異といってもいい。「探偵物語」は観てないけどこれ、きっと数々の参照元なんだろうなぁという予感を抱かせてなお余りある強烈さ。
なにしろ目の前で謎の美女たち(隣人)がおっぱい丸出しでニコニコしてても驚異の平常心(正しいリアクションを取るギャングの下っ端がちゃんと出てくる)。
一方で訳ありの依頼人との会話が単なる事務的な会話なのにカメラワークが完全に恋に落ちる瞬間(音消したら余計そう見えると思う)だったり、どの場面もいちいちちょっとした、しかし明確な違和感が残る。
カメラは律儀すぎるほどマーロウに密着していくのに、肝心のこいつが何を考えてるのか、行動原理はじめ内側がさっぱりわからない。
常にくわえタバコ、どこへ行ってもその場にあるものでマッチを擦ったり、というわかりやすい行動を取るのとは対照的に、つまらない冗談が本気なのか方便なのかもよくわからない。
ところどころ、えらい怖いことも起こるんだけど、全体のトーンとしてはすごい軽いというか、乾いてるというか、オフビート。
これ笑っていいの?みたいなよくわからない場面がちょくちょく挟まる。
初見ではどういう映画なのか、どこへ向かってるのかがよくわからなくて、捉えどころがない。
マーロウはいちおう事件を追ったり巻き込まれたりして、いちおうフィルムノワールの体裁は取ってるんだけど、たぶん大事なのはそこじゃない、っていうか事件の本筋より関係者の奇行の方が気になる。
からのまあこれ以外ないわねぇと思うオチでスパッと終わる。なるほどねぇ。。
印象としてはタランティーノの映画観てる時の感触をすごい思い出した。
しかし猫はいいとして、夜の海で「ネクタイ預かっててくれ」が笑うとこだったのか観終わった今でもよくわからない。思わずウケちゃったけども。。
これがかっこいい!という気持ちもわかるが、周りにいたらちょっと嫌だなフィリップ・マーロウ