「好きだから許せるってだけ」ロスト・ハイウェイ カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
好きだから許せるってだけ
何回観ても難解w
ツインピークスの次作。
リンチはツインピークスの大ヒットによりマスに向けても自分の赴くままに作品を製作する事が許された数少ないハリウッド監督になったが、そういう意味では本当に撮りたかった作品って本作含めそれ以降のものと言っても過言ではないと思ってる。
基本的に映像と音楽でアートエンタメを表現したい監督なので、他人にとってわかりやすいストーリーなんかは頭に無く構成されているため、時系列はバラバラ、同一キャラクターを複数の役者が演じる、複数のキャラクターを一人の役者が演じる、突如不思議な人物が現れるなどで本当に理解は難しいが、それを知った上で鑑賞すると味わいが出てくる面白い作品。
内容をどうこう言うものではないが、他の作品と大きく異なるのはデビッドボウイ、マリリンマンソンなどのメジャーアーティストの音楽を使ったことが特徴的だと思う。
O・J・シンプソン事件から着想を得たそうだが、そう言われても冒頭と末尾のハイウェイでセンターラインをひたすら走る映像以外は「なるほど」とはならないくらい理解へと導くキーワードとしてはほど遠いが、リンチがこの映画の意味について尋ねられたときに「サイコジェニック・フーガ」(記憶や性格を含む自分のアイデンティティの意識を一時的に失う解離の一形態)と答えているのでレニエとアリス、エディとディックだけでなくフレッドとピーターも同一人物と思って観るべきであろう。
劇中に出てくる白い家と中の家具がリンチ所有だったことは有名だが、ある朝早くインターホンが鳴り「ディック・ローラントは死んだ」と言われ窓の外を見たが外には誰もいなかった、と言うのは本当に彼自身の身に起こった事。
またロバートロッジアはブルーベルベットのフランク役をやるつもり満々でオーディションに来たがデニスホッパーが演じることが決まっておりリンチにブチ切れ罵倒したが、リンチはそれを覚えており本作の起用とあのロードレイジシーンに繋がったんだそう。
結構実際に見聞きした経験からインスピレーションを得て作中に影響を与えていると言うのも面白い作品。