「大傑作」ルパン三世 カリオストロの城 吉泉知彦さんの映画レビュー(感想・評価)
大傑作
宮崎アニメは『風の谷のナウシカ』から映画館で見ているので、この映画がデジタル利マスターでスクリーンで見れるのはとても嬉しかった。しかしボロボロでもフィルムで見たい気持ちもあった。
改めて見るとルパンや次元、五右衛門、不二子は楽しげに振る舞っているが、実のところアウトローであり、陽のあたる場所を歩けない後ろ暗さや孤独さをひしひしと感じた。クラリスがどんなに慕ってくれたとしても受け入れないのは誠実さである。
結末で不二子がゴート札の原版を持って逃げるとルパンがオレにも寄越せとふざけるのだが、この映画の冒頭でルパンは車いっぱいのゴート札を全部捨てる。つまり偽札が欲しいわけでは全くなく、不二子にじゃれているだけなのだ。
カリオストロ伯爵は悪者であるのだが、クラリスとの婚姻を本当に楽しみしていたと思う。婚前交渉もせずにワクワクしていたと思ったら時計塔で針に挟まれて死んでしまう。気の毒すぎる。
宮崎アニメの原型的に場面がたくさんあった。修道院で育ったクラリスは無垢であるのだが、今後国を運営する立場になれば表も裏も知る事になり、きれいではいられなくなるであろう。そんな彼女の行く末に『ナウシカ』のクシャナの姿が偲ばれた。
銭形警部がルパンを追いかける様子は恋に破れたストーカーのようであり、追いかける行為そのものが生き甲斐になっているかのようでもあった。
小学生でテレビで見て、当時はビデオもなくカセットに音声を録音して何度も聴いたため主題歌も口ずさめる。中年になり改めてスクリーンで見ると、銭形とカリオストロ伯爵にとても感情移入して見た。
(追記)2021年10月13日
4Kリマスターでの上映で7年ぶりに見る。前回のリマスターの時は、新潟での上映が不明だったのでTOHOシネマズ日本橋で見て、その後イオンシネマ新潟南での上映があって、せっかくだから間を置かずに見た。なので劇場は3回目だ。
先日『未来少年コナン』をNetflixで見たばかりだったので、キャラの配置がだぶる。
ルパン→身体能力がほぼコナン
銭形→ダイス
カリオストロ伯爵→レプカ
不二子→終盤のモンスリー
クラリス→ラナ
手癖で『ルパン三世』をやったら大傑作が生まれてしまった、みたいな感じだろうか。だとしても素晴らしいことには変わりがない。活劇としても面白いし、ミステリーの配分もすごくいい。古代ローマの街並みが宝ものというのもスケールが大きい。