劇場公開日 2001年10月6日

「配役はとてもいいけどね」リリイ・シュシュのすべて つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 配役はとてもいいけどね

2025年12月25日
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鑑賞方法:VOD

この作品が好きな人がいることは理解出来る。岩井俊二監督も遺作にするなら本作がいいそうだ。
しかし私にはイマイチ刺さるものがなかった。

まず、岩井俊二監督の作風が合わないのだと思う。
この人の物語はネガティブな方向に進みすぎる。どんどんどんどん悪い方向へ進んでいって、一番下まで落ちたときに物語が終わる印象だ。
監督本人や、観ている人の中にはビタースイートな終わり方なのかもしれないけれど、自分にはただのビターに感じる。
やはりどこかで気持ちよく終わりたいと願う気持ちがあり、それを届けてくれない岩井俊二という人はやっぱり合わない。

あとは、私自身、音楽に余り興味がないので、音楽そのものや特定のアーティストに傾倒する感覚がよく分からない。
音楽で心が救われるといったものになると全く理解不能になる。
この作品はインターネットのコミュニティの中でかわされる会話と、目に見える世界の物語が交錯しながら進む、割と凝った作品であるが、リリィ・シュシュについて語るパートにほとんど共感を得ることができないし、理解は、まあある程度は届くが、本当の意味で理解出来るとは言えない。
そんなわけで、作品の半分について入り込めないことが個人的には問題だった。

いいところ、と言えるか分からないけれど、陽光の強さは印象的。
作中で起こる様々なことと画面の明るさの対比は、ある意味でえげつない。
暗い物語をそのまま暗く描かないことは良いことかもしれないけれど、光が強すぎる故に闇の濃さが増し、私には少々キツかった。

自分には合わなそうと思い永らく観ていなかった作品で、いい加減そろそろ観とこうかとなったわけだが、やはり合わなかった。
観る前の自分の勘というのは意外と当てになる。

つとみ
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