「それでもやっぱり気になるアメリカの視線」ランボー 怒りの脱出 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
それでもやっぱり気になるアメリカの視線
アクション映画としての面白さは置いておくとして(それを置いといてはいけないのかも知れませんが)、やはりベトナム戦争の描き方が気になります。
ベトナム戦争で傷つき国家への恨みを募らせたランボーを再びベトナムに送るのに「まだ戦地にPOW(戦争捕虜)として捕らえられている兵士を助け出す」という動機が与えられます。その任務を際立たせる為には、「ベトナム兵は凡庸なのに残虐」という描写が必要となります。でも、本作ではベトナム兵には「悪」としての魅力すら与えられず、それを放つのはベトナム軍の上に立つソ連将校なのです。その結果、ベトナム兵はモブ(群衆)としての役割でしかなくなります。
また本作では、ランボーが信頼を置く嘗ての上官トラウトマン大佐に「間違った戦争だったが、国を憎むな」と語らせます。しかし、何が間違っていたのかは全く語られぬままでした。もしかして、「勝てない戦争に加わった戦略が間違っていた」と言うだけなのではないでしょうか。傲慢なアメリカの帝国主義的驕りが誤っていたとは思っていないのでしょう。
更に、POWを救出しようとするランボーはその過程でベトナム民間人と思われる村を焼く事になってしまいます。何の罪もないのにあの火で死んでしまうベトナム人は仕方ないのでしょうか。
などと、ベトナム戦争に対するアメリカ人の視線は、小さなことも妙に気になってしまうのでした。
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