劇場公開日 2017年4月1日

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「欲に溺れる人間の行く末と教訓劇」乱 星組さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 欲に溺れる人間の行く末と教訓劇

2025年9月24日
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男の機嫌はいい

順風満帆の人生だった。
ここから物語は始まる。

自ら築いた地位を息子達に譲るが
欲にまみれた次世代の思惑と終焉
シェイクスピアの「リア王」
土台はその戯曲にある。

第三者の立場

この映画で面白く感じたのは
「道化」ピエロの役である。
一番目立つのは秀虎の御付き
狂阿弥役のピーターがいる。
彼は派手に立ち回り親方にも意見を云う
親方の秀虎は時に戒め、時に受け入れる
そんなシーンが何度かある。
もうひとり、道化とまでは行かないが
三男の義理父・藤巻信弘役の植木等がいる。
隣国の領主藤巻は、強く出しゃばらず
優しい言葉の中に的確な意志を入れてくる。
真意は娘婿とその父を立てること、守ること。
そこに徹底している姿は見ていて気持ちがいい。

そして、次男の妻 楓の方・原田美枝子
この人の裏の顔には憎しみが潜んでいる。
人を操り撹乱させるのは、あの映画
「蜘蛛の巣城」の山田五十鈴と重なるが
やはり迫力は先輩の方が上と感じた。

シェイクスピアの戯曲は心の深部に触れる。

この映画、色々な見方があって良いと思う。
主役、子供達、ここに書いた第三者的な人物、
憎む者達、壮大なセット、衣装、構図の意図、
第三者・第四者・第五者たちの心情と死に様、
ラスト・シーンの彼は何を思っていたのか、
全てが虚無の出来事なのか…などなど、
たくさんある。

屋内での戯曲風の演出
オープンセットの演出
舞台劇としての鑑賞
黒澤明監督の見せ方
映画「乱」の創造

面白いと思う。

星組