「現実は記憶の中に作られる」Love Letter td.mさんの映画レビュー(感想・評価)
現実は記憶の中に作られる
偶発的な出来事をきっかけに一気に蘇る埋もれていた思い出と、それによって展開する現在進行形なストーリーが、小樽の街を舞台にスタイリッシュでどこかしらノスタルジックに綴られています。
中山美穂は一人二役、おすましな方がしっくりこなくてよそよそしい感じがします。もう一人の樹のあっけらかんとした演技の方が彼女の持ち味が良く出ていますね。
最後に出てくる、プルーストの「失われた時を求めて」は、ラストを締めくくる重要な役割を担う本ですが、この本の主題である記憶と時間軸のテーマがそのまま本作のテーマと言えるでしょう。
そんなことを思い自分に置き換えると、思い出の深いところにダイブしていくような錯覚にとらわれます。
大きな盛り上がりのない淡々と描かれる、言ってみれば「単なるラブストーリー」なんですが、とても感慨深い作品でした。
──中山美穂亡き今、この作品の記憶がより深く静かに胸に染み入ってきます。 彼女の声も、表情も、雪の中の足音も、すべてが記憶の中で生き続けているように思えるのです。
評価 ★★★★★
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