「スクリーンで観られて幸せ」Love Letter 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
スクリーンで観られて幸せ
本作は邦画ラブストーリーとしては最高傑作であると思っている俺だが、映画を観るようになったのは10年ちょっと前からなので、本作はビデオでしか観ていなかった。
ビデオで観てから「スクリーンで観たかった」とずっと思っていたので、今回のリバイバル上映に飛び付いた。
【物語】
婚約者を亡くした渡辺博子(中山美穂)は、3回忌で彼の実家を訪ねた際に見せられた中学の卒業アルバムで中学時代に彼が住んでいた小樽の住所を知る。 忘れられない彼への思いから、気持に生区切りを付けるために天国に送るつもりで手紙を出した。すると、来るはずのない返事が返って来る。
それはある偶然が生んだ奇跡だったが、それをきっかけに、中学時代、彼と同級生だった女性(中山美穂)と知り合い、知らなかった中学時代の彼のことを知って行く。
【感想】
スクリーンで観て改めて感激。
この作品の素晴らしさは大きく分けて3つ。
1.脚本
2.ヒロイン
3.舞台
順番に行くと、
まず脚本が練りに練り上げられていること。物語序盤にいくつか頭に浮かんだ疑問も、物語が進むにつれて
「そうか、そういうことか」
と全てが氷解して行く。 ?の種明かしの仕方も自然。
そして、作品の主体が渡辺博子からいつのまにか、知らないうちに藤井樹(どちらも中山美穂)に移って行く流れも秀逸。 博子の心の内に残る樹への思い、寂しさ、悲しさで始まった手紙だったが、樹の心の内の思い出、樹自身が当時気付いていなかった思いをたどる手紙になる。
とても切なくも美しい青春時代の純愛が描かれ、なによりエンディングが素晴らしい。 最初に観たときは胸が震えたというより もう絶句した。
このラストにつなげるために、博子と樹のプロポーズ話、樹が母校の中学を訪れることのきっかけ等が伏線として自然に張り巡らされているのも見事。
本作は岩井俊二監督の初長編映画だと聞く。それを聞いての想像だが、監督は本作の脚本は数えきれないほど書き直し、推敲を重ねたのではないだろうか。“カメラをとめるな”、“侍タイムスリッパ―”でも思うのは、脚本を練るのは予算が少なくても可能で、逆に脚本さえ良ければ低予算でもすごく良い作品はできる。本作はキャスティングを観ればそれなりの制作費が付いたと推測できるが、脚本の出来が良かったからスポンサーが付いたのでは?
次にヒロイン。
何と言っても、撮影当時24歳くらいの最旬の中山美穂が美しい。演技がどうこう言わない。存在が尊い。加えて、中学時代の樹を演じる酒井美紀の初々しさが青春の純愛の空気を見事に醸す。ついでに言っておくと(笑)、中学時代の相手役を演じる柏原崇も不器用でシャイな少年らしさが出ていてとても良い。
最後に舞台。
俺は北海道に深い縁があり、終生雪国に憧れを持つ人間でもあるので、小樽の雪景色映像の美しさも評価を高めている。
以下蛇足。印象的な冒頭の雪景色シーンがすごく小樽っぽいのだが、物語上は神戸方面なので「小樽じゃないのか・・・」と思っていたが、リバイバル上映の話題の中で最近北海道の友人と話して、実は冒頭シーンは小樽で撮影されたと知り凄く納得。
まだ見たことない方や、ビデオしか観ていない方は是非このチャンスにスクリーンでの鑑賞をおススメしたい。