「清王朝黄昏の日々」ラストエンペラー Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
清王朝黄昏の日々
感想
清王朝の落日期に西太后に続き皇帝となった、愛新覚羅溥儀とその取巻きの者の数奇で波乱に満ちた生涯を描く実話を元にした物語。旭日の如くアジアに勃興し、近代化した大日本帝国が進めてきた植民地政策に乗り、満洲帝国皇帝になった清王朝最後の皇帝溥儀。
当時の日本が中国大陸に行ってきた振る舞い、さまざまな圧力と誘惑に翻弄され、巻き込まれていく皇帝としての溥儀。中華民国、国共内戦及び合作、大日本帝国崩壊、中華人民共和国と歴史的変遷を遂げると共にその立場や人間関係が劇的に変化して行く。その人生は激動の歴史に翻弄され続けたものであった。
溥儀の皇帝としての側面、また人としての側面の両面を丁寧に深掘りしていき、どのような人物であったのかを浮き彫りにしていた。さらに、皇帝期の儀式や慣習の数々、傀儡政権期の矛盾と心の葛藤など英国人皇帝付教師レジナルド•ジョンストン著述「紫禁城の黄昏」を元に興味深い話が哀れみを踏まえて映像化されていた。
本作の中での溥儀自身は単に実直な思慮深い人間に視えた。問題は周りの取り巻く人間や、置かれている状況により、歴史的に無責任な評価を押し付けてしまう社会であり、育成する人物や方向性により人はいくらでも良くも悪くも変わることができるということがよく判る映画であった。
監督は映像詩とも言えるクオリティを現出させる名匠ベルナルド•ベルドリッチ。まさに荘厳なまでのドラマを演出した。◎
撮影は「色は象徴。」で有名なビットリオ•ストラーロ。溥儀が皇帝に即位する時とラストシーンに紫禁城内の玉座で撮影が行われ、皇帝の色である黄色が効果的に使われ、荘厳に黄金色に輝いている映像は強烈な印象であった。◎
音楽は今や伝説となってしまったYMOの坂本龍一とトーキングヘッズのデビットバーン。アカデミー最優秀作曲賞受賞。テーマ曲がかかるとすぐにジョン•ローンの顔が思い浮かぶ。
出演
溥儀役はジョン•ローン。演技派でイケメンだった。ジョンストン役、名優ピーター•オトゥール。アヘン中毒であった悲劇の第一夫人役のジョアン•チェンも好演。さらに坂本教授は満映協会理事長で最後を迎えた甘粕正彦役を怪演している。
1988年2月 丸の内ピカデリー1 初鑑賞
⭐️4