「世界に知らしめた光と影の映像美、鬼気迫る名演」羅生門 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
世界に知らしめた光と影の映像美、鬼気迫る名演
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今から約70年前。世界にクロサワの名前を、日本映画の存在を知らしめた歴史的作品。日本映画として初めて第12回ベネチア国際映画祭でグランプリの金獅子賞を受賞し、第24回アカデミー賞名誉外国語映画賞を受賞しました。
原作は芥川龍之介の短編「藪の中」。時は平安時代の乱世、都にほど近い山中で侍夫婦が盗賊に襲われ、夫の侍が殺されます。やがて盗賊は捕われるが、盗賊と侍の妻、目撃者らの食い違う証言がそれぞれの視点から描かれます。見栄や虚栄のための嘘により、人間のエゴイズムがあぶり出され、黒澤明監督と橋本忍による脚本がこの世の真実とは何かを追求しています。
さらに、この映画の見所は物語構造とともに、その映像美と役者たちの演技。豪雨の中に浮き立つ荒廃した羅生門の造形美から始まり、盗賊、侍とその妻の森の中での立ち回りシーンの迫力、語り部となる杣売りと旅法師らの羅生門下でのやり取りなどすべてが印象深い。
夏の森の中の光と影のコントラストの中で、盗賊を演じた三船敏郎の力強くも滑稽な野性味が繰り返される証言シーンを牽引し、侍の妻を演じた京マチ子が女性の内なる強さや妖艶さを見事に表現。木漏れ日の光に照らし出される表情が美しさを増し、モノクロの映画でありながら色彩を感じさせます。
また森雅之が演じる侍の高貴さが対比となり、美しい妻の前で追いやられた男の無念さ、自我を浮き立たせ、志村喬が演じる杣売りらをこの世の藪の中へと引きずり込んでいきます。そしてラストの解釈は、この映画を見た者のエゴイズムが問われることになるでしょう。
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