「ある視点」羅生門 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
ある視点
第12回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作。
第39回ヴェネツィア国際映画祭栄誉金獅子賞受賞作。
Blu-ray(デジタル完全版)で3回目の鑑賞。
原作(羅生門/藪の中)は既読です。
交錯するそれぞれの視点。
浮かび上がるのは真実なのか?
それともただのカオスなのか?
人間の表と裏を象徴するかのように光と影にこだわった画づくりが印象的で、優れたビジュアルセンスだと思いました。
徹底した生々しさもいい。ギラギラした陽光と滝のように流れ落ちる汗、こちらまで暑くなる泥臭さが堪りませんでした。
人間の本性とエゴが炙り出され、それぞれの都合によって書き換えられていく事件の様相と真相。同じ出来事でも見方が変われば三者三様の捉え方が可能で、それが真実を藪の中へと引き摺り込んでしまう。恐ろしいなと思いました。
「三度目の殺人」を初めて観た時も感じましたが、唯一無二の真実と云うものは端から存在せず、当事者や第三者それぞれの中に真実があると云うことかと…。関係者の数だけ真実がある。人間の心の奥深さが浮き彫りになっていきました。
醜いところもあって、美しいところもある。
だからこそ人間は素晴らしいのかもしれない。
[以降の鑑賞記録]
2020/03/28:NHK総合
※修正(2023/04/30)
観賞菩薩さんへ。
コメントありがとうございます。
黒澤明監督生誕110年&三船敏郎生誕100年を記念した放送だそうで…。今年が映画界のレジェンドのダブル・アニバーサリーだったなんて全く知りませんでしたよ…(笑)
いいなぁ~。コロナにびびって映画館に行く勇気が出ない今日この頃であります…。「三島由紀夫vs東大全共闘」めっちゃ観たいんですよ! 予告編だけで「これは観ないとアカンやつや!」ってピンと来たんですもの…。
三島由紀夫が「ゴジラ」を絶賛していたのは知っていましたが、まさか「ウルトラマン」まで観ていたなんて…。大作家が称賛してくれているなんて、やっぱり日本の特撮映画、特に反核・反戦のメッセージが詰め込まれた「ゴジラ」は世界に誇れる作品だな、と改めて感じました。
しゅうへい(syu32)氏✨本日…
「三島由紀夫vs東大全共闘 /50年目の真実」をMOVIX尼崎に観に行き、帰ってBSつけたら、本作をやってました…BS/NHKは黒澤作品をホントによく放送してくれますね…映画の中の雨音と外の雨音が重なり、不思議な感覚でした。
蛇足:三島由紀夫の名言に…『精神分析を待つまでもなく、人間のつく嘘のうちで、「一度も嘘をついたことがない」というのは、おそらく最大の嘘である。』とあります…
あと、「よくみるTV番組は?」という『文藝春秋』のアンケートの問いに、『ウルトラマン』と答えており、一作目の『ゴジラ』を「ゲテモノ映画」「キワモノ映画」との酷評が多勢の中、三島氏のみが「原爆の恐怖がよく出ており、着想も素晴らしく面白い映画だ」と、ドラマ部分を含めたすべてを絶賛してくれたと、田中友幸氏の発言。