「やりたい放題…」48時間 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
やりたい放題…
今の感覚からすると、この刑事、後ろに手が回るな、こんな刑事がいたら困るなって思うほど、やりたい放題で、唖然とする。
でも、映画の中なら、そこが男臭く見えて、スカッとするから不思議。
今の感覚でこの映画を観ると、”48時間”という時間のくくりもなんとやら、その設定が全然生きていないし、特に物語も変転があるわけではない。
アクションも、ガンアクションのショット・ショットは重厚で目を見張ってしまうところはあるけれど、今の映画のような派手さはないから、これを”アクション映画”としてみると、拍子抜けする人もいるだろう。
サンフランシスコでのカーチェイスもあるが、古典『ブリット』は越えられていない。
二人のバディものも、すでにたくさんの映画が作られていて、この映画ならではの良さもあるんだけれど、だから特に目を見張るものはない。そもそもレジーが協力する動機がうすい。
マーフィ氏のマシンガントークと、武骨なジャックの対比が売りらしいが、字幕で観ちゃったもので、マーフィ氏の”マシンガントーク”がいまいち堪能できていない。
音楽で賞を取っているが、今の感覚からすると、特に際立つわけではない。
でも、この映画が1980年代に作られたことを考えると、その意義は一変する。
映画史を語るほど詳しくないので、そのあたりは、他のサイトの他の方のレビューを参照していただくことにして…。
人種間の確執。
ネイティブアメリカンの扱い等はこの映画以前の西部劇を引きずっているようだけれど。
白人の牙城ともいうべき、カントリーミュージックの店にレジ―が乗り組む場面の緊張感とか。ああ、あの国にはこの頃も(今も)、KKKとか、たんに肌の色や遠い祖先の出自が違うというだけで、平気で命を奪える人がいるんだよなと思い出す。
そんな中で、このコンビが力を合わせて、犯人を追い詰めていき、はじめは”道具”として利用されるだけの存在が、認め合うようになる構図が、どれだけ観客に明るい未来を描かせたかと、想像してしまう。
惜しいかな、そのプロセスはざっくりすぎて、唐突なんだけれど、その反面、日常生活を丁寧に入れているので、元々のジャックやレジーの性格が垣間見られて、心を通わしていくのも当然に見える。
しかも、役柄ではジャックはレジーを”道具”扱いしながら、走る車を避けて道路を横切る場面で、ノルティ氏がさりげなくマーフィ氏を気遣う様子だったりして、映画の外でもいい関係であることや、ノルティ氏のお人柄が見え隠れして、あったかい映画になっている。
加えて、ジャックの彼女が菜々緒さんに似ていてそんなところもツボだったし、
ジャックを演じたノルティ氏が『ホテル・ルワンダ』の大佐だったりするので、ついテンション上がってしまった。
この当時の女性観とか正義感とかツッコミどころも満載だけれど、観て損はない映画。