劇場公開日 1961年4月25日

「正に映画のマスターピース」用心棒 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0正に映画のマスターピース

2019年8月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

見事の一言
映画の金字塔
三船敏郎の強烈な存在感と三十郎の造形
キラ星の様な昭和の名優達の素晴らしい演技
どんな端役にも血肉の通った演技と存在感が溢れています
望遠を駆使した巧みな撮影
構図の見事さ、照明の計算が生み出す渋い陰影
完璧な演出の冴え
何もかも感嘆するばかりです

物語の構造も見事です
極めてシンプルなものを最初に提示しておき物語の展望を見通しよく見せるのですが、やがて八州廻りによる停戦、卯之助の登場、人質交換、おぬいの話と次第に複雑さを深めていき、三十郎が囚われた時には観客は最早物語がどう転がって行くのか見通せなくなってしまっており、最早観客自身こそが物語の中に囚われてしまっているのです
これからどうなるのかと固唾を飲んでクライマックスに突入していくその緊迫感と躍動感!

そして冷戦が激化し代理戦争の様相を見せつつあった当時の世界情勢をこの物語のなかに暗喩として閉じ込めて見せる時代性の反映も見逃せません
結局物語は名主の多左衛門と造酒屋徳右衛門の直接対決で幕を閉じるのです
そうして武力対決は終わり、普通の人々の日常の日々が始まり三十郎もまた無用となり去っていくのです

正に映画のマスターピース
世界中の映画監督が本作を手本にしたというのも頷けます
当時の世界最先端にして最高峰の映像作品だったことは間違いありません
半世紀経ってもこれを超える作品はそうないのですから

新冷戦が始まった現代にまた一層の輝きを放っています

あき240