劇場公開日 1990年5月

「遺書ではなかったのでしょうか」夢 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0遺書ではなかったのでしょうか

2020年3月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

黒澤監督80歳の作品
遺書なのだと思います
8編の短編全て現世から見た彼岸を描いているのだと思います
その上に自分の一生を投影して語っているのではないでしょうか

虹の下の狐の家
夢を見たいが為に責任を取らねばならなくなりに死に向かったこともあった

雛壇のような桃畑
芸術の価値を追い求めてきた自負は誰にも負けないつもりだ

雪山のホワイトアウト
方向性を全く見失った事もあった
そのまま眠りたかったが、そのあとには晴天が広がって九死に一生を得た

彼岸とつながるトンネルと犬にくくりつけられた手榴弾
仕事とは言え部下達を酷使してすり潰してしまったこともあった

ゴッホの絵の中の女達はフランス語なのにゴッホとの会話は英語の世界
自分の価値を分かってくれたのは結局アメリカ人だけだった
彼らの力で機関車のように働いた

原子力発電所の爆発する世界
もう自分の才能を発揮べき場所はこのように爆発してむちゃくちゃになって終わった

核戦争後の地獄
何もなさずにただ生きているのは地獄そのものだ
なまじ角があるだけ苦しいのだ

安曇野の天国へつながる小橋
願わくば最後はこのような世界で安らかに過ごさせて欲しい

そのようなメッセージに感じました

このメッセージを受け止めて製作に力を貸してくれたのはやはりアメリカ人でした
日本人としては悔しく情けなくなります
黒澤監督のような稀有の才能を日本は最大限活かす活躍する場を与えられなかったのです

黒澤監督は70年代の初めに米国に移住すべきであったのかも知れません
その方が遥かに黒澤監督の才能を発揮出来たのかも知れないのは確かです
黒澤監督には2001年宇宙の旅に負けないSF映画を撮れたはずだと確信します
キューブリックに勝る才能があったはずなのです

今年2020年3月23日は、黒澤監督生誕110年です

あき240