「大衆に受け入れられることは悪なのか」モンパルナスの灯 あっきーさんの映画レビュー(感想・評価)
大衆に受け入れられることは悪なのか
20世紀初頭の絵画は写真の普及により写実的表現に価値を見出せなくなったことから、心象風景を絵に反映することで差別化を図ろうとしたと聞いたことがある。
モジリアーニの独特な肖像画もその一つなのだろう。つまり何とかして自分の付加価値を売り込みたかったはず。
なのになぜ盛況な個展に嫌気が刺し、商標に使うと言った富豪の話を蹴ったのか。低俗な商業主義に迎合したくないということなのか。でもアートは多くの人に楽しまれてなんぼ。特に個性的な表現が共感を得るには、YouTube同様、より多くの人の目に触れる必要があると思うのだが。ジャンヌがラストシーンで語った「彼は報酬より励ましが欲しかったのです」と言う言葉も、だったら励ましを得る機会を増やすべきでは、と思ってしまう。結局自己の評価を確認することなく生涯を終え、愛する人までも悲惨な末路を迎えることとなった。
絵描きを生業にする以上、自分の精神の吐露が多くの(でなくても)他者の共感を得ることは無上の喜びではないかと思うのだが…「自身の苦悩を絞り出している」と言うセリフもあり、それをベタベタとイジられたくない、というのが答なのかもしれない。何か因果な仕事ではあるなぁ。
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