「ひと世代後、再びのヒットは、その普遍性ゆえか」もののけ姫 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
ひと世代後、再びのヒットは、その普遍性ゆえか
先週末の国内映画興行成績ランキングで
第4位が「もののけ姫」。
言わずと知れたジブリの名作、4Kリマスター。
61館だけの限定公開にしては驚きの高順位。
あっという間に席が埋まっちゃうだけのことはある。
* * *
運よく好みの席がとれたので、
スクリーンが日本一デカいというグランドシネマサンシャインで観てきた。
作品については、
あちらこちらで詳しい解説・考察がなされてるので、
今さら語ることもあるまいが、
ワタクシにとっては、
ナウシカと並んでジブリ映画の双璧。
ただ、
ナウシカは劇場で6回観たし、その後も何度かリピートして、サントラもすり切れるほど聴いたけど、
もののけ姫は、劇場で観たのは1回。その後のリピートも、してるとは思うけどせいぜい1〜2回(定かでない)。
劇伴も、よかったとは思うけど特にサントラを聴くほどではなかった。
つまり、
インパクトという点では、ナウシカが圧倒的に上だった。
だが作品としての深さは、
もののけ姫の方が上だと、当時も思った。
ナウシカは、当時の世界情勢を反映して、
「正義」を振りかざす二つの大きな国の対立と、
そのどちらも、つまり人間じたいが、
地球という惑星から見たらガン細胞のような存在でしかないということが読み取れて、
深い、と思ったんだけれど、
もののけ姫は、
日本古来の自然信仰、
人間による自然改造、
少数民族(かもしれない)蝦夷、
男尊女卑、
被差別民、
権力者のパワーゲーム、
舞台となった戦国時代にはすでにその萌芽が見られた近代合理主義、
自らの幸福を追求することと他者の幸福との関係
など、安直な解決方法などない矛盾だらけのリアルな人間(+生物)社会が描かれていて、
ナウシカを上回るその深さに舌を巻いた。
* * *
で、今回の上映。
「限定公開」初週の好調さゆえ、
今週末からは、61館から171館に拡大されるという。
それはとってもいいことだし、
この作品が全然古びず普遍性を持っていることの証だと思うけれど、
世界の課題が依然変わっていない(むしろ悪化してる?)ことを表している気もして、
若干複雑。
だがともかく
生きてさえいりゃ、なんとかなる、かもしれない。だから、
「生きろ」
* * *
ともあれいずれにせよ、
IMAXでの「もののけ姫」は、
一見の価値大いにあり、なのであります。
