赤ひげのレビュー・感想・評価
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これこそ映画の世界遺産です
文句のつけようはずもありまん
ただただ感涙あるのみです
物語は一言でいえば新任の若い医者の成長物語です
その主人公に加山雄三を配役する眼力は流石というしかありません
物語は、狂女、六助の娘おくにと三人の子供、佐八とおなか、12歳のおとよ、7歳の長坊の五つのエピソードで構成されます
おとよと長坊の二つが休憩を挟んだ後半になります
狂女の登場の鳥肌のたつ怖さはどんな怪談よりも怖い
おくに役の根岸明美の超がつく長台詞シーンは驚嘆、圧巻で度肝をぬかれるばかりの名演です
異常な緊迫が画面に溢れています
おとよと長坊の二人は病床での眼の光にはまいりました
神ががった演技が山のように全編に満たされています
そこに黒澤監督の演出が炸裂するのですから、強烈な映画体験と言うしかありせん
劇中の季節が初冬に始まり真冬を経てラストシーンは積雪の溶ける明るい日射しの春で終わります
主人公の心象の変化を季節で表現させているのはお見事という他ありません
井戸の水面に水音がして波紋が広がって、長坊が命をとりとめたことを実感するシーンも流石です
これこそ映画の世界遺産です
・人の変化には周りの人たちの働きかけが大事なんだとしみじみ分かった...
・人の変化には周りの人たちの働きかけが大事なんだとしみじみ分かった
・変化というより成長だったのか。特におとよ!おとよの変わりようを見るのが楽しみでならなかった
・笠智衆の一言で満面の笑みになっちゃう
黒澤映画のベスト3くらい
貧困と無知との戦い。全ての病気に対して治療法はない!と断言する新出去定。病気の影には政治が絡んでいるとのことだ。終始、貧乏人の味方である人情医師赤ひげだ。
3時間にもわたる長い作品ではあるけれど、前半2時間、後半1時間と雰囲気が全く違うところがいい。前半では山崎努と桑野みゆきのエピソードが凄い。陰影を上手く使った照明技術で頬のこけ方が怖いくらい。逆に後半の中心になる置屋の12歳の娘二木てるみに当たるキャッチライトが野性味を醸し出し、全体的に照明技術が印象的でもあった。
子ネズミ長次の似たようなエピソードは今ではあちこちで使われてるけど、みなこの映画を参考にしているのかもしれないなぁ。
「後悔するぞ」とか、印象に残る台詞は人によって違うと思うけど、幼い娘が犯されるなどの事件を聞くたびに「よくあることだ」と言い捨てる赤ひげが印象的だった。江戸時代ってのは日常茶飯事だったのだろうか。
素晴らしい映画
DVDにて。前情報なしに初めて観た。社会派映画だった。しかしさすが黒澤。しっかりエンターテインメントとして仕上がっている。日本がダメダメな今こそ、この映画を観て、我々は江戸の統治に学ぶべきではないか。
劇中の小石川養生所は、あの当時(1700年代)、目安箱から集められた民の意見に基づき、幕府主導で行なわれた貧困対策。これにまず驚く。同時代の他国ではありえない。日本流の民主的統治は上手く回っていた。前々から感じていたが、日本の最盛期って実は江戸時代だったんじゃないかと思う。(そうならないことを願うが笑)
我々の民主主義精神のルーツは、この江戸時代におけるトップ主導の民主的統治にある。しかしこれは、欧米の共同体主導の民主主義とは全く食い合わせが悪い。
明治政府は日本と欧米の民主主義の違いが分かっていた。だから明治維新は成功した。しかし戦後の日本政府は、この違いを忘れた。そして今こそ、思い出すべきだ!
余談ですが、小石川養生所の設置は大岡忠相の主導により行なわれたが、その貧困の原因である享保の改革の大失敗を引き起こしたのも大岡忠相(笑
・・・と、映画の話と大分逸れたな。
赤ひげ先生存在感なさすぎ~
群像劇です。
患者さんを中心にした人間模様です。
でも、もうちょっと赤ひげ先生の魅力を全面に出してほしかったです。
地震の後のセットは凄かったです。さすが黒澤監督だなあ、と思いました。
『生きる』に繋がる
人の死をもって生を見る
語らずに逝くもの
語らなければ死ねぬもの
今の世も昔もなんら変わりがないはず
当たり前だけど
人の数だけ生と死があるのだと気付かされる
作家の佐野洋子さんがこんな事を言っていた
「死の意味は自分の死ではなく他人の死なのだ」
まったくだ
思ってたより退屈でした。 赤ひげ先生はかっこいい。 地廻りをボコボ...
思ってたより退屈でした。
赤ひげ先生はかっこいい。
地廻りをボコボコにしたあとの、赤ひげ先生のセリフは笑えた。
「うん。これはひどいこんな乱暴はよくない」「医者ともあろうものがこういうことをしてはいけない」
桑野みゆきと二木てるみ
テレビドラマを見ていて、またもや観ることに。
女優中心で見たが、先ずは狂女をお世話する団令子、狂女の香川京子、自責の念から死を選ぶ桑野みゆき、娼家の鬼婆の杉村春子、登の母親の田中絹代、床磨きの二木てるみ、そして登を裏切った姉の代わりにかいがいしく世話をする内藤洋子は大ファンだった。
黒澤の集大成のような巨編だが、これだけの作品を今の映画人にも作ってほしい。
人生の出発点と終点
総合85点 ( ストーリー:90点|キャスト:80点|演出:75点|ビジュアル:65点|音楽:65点 )
医者に行きたくても行く金もない貧困層に尽くす医者の話かと思いきや、必ずともそうとも言えない。むしろ治療にかける医術の話、特に医療の技術的な話は控えめで、ただそこに生きる人々の姿を養生所を通して見せる形になっている。
それでその人々だが、それぞれの抱える重い事情と背景がしっかりと描かれていて引き付けられた。もうどうしようもない半生を背負ってやっとここに流れ着いた最後の場所という雰囲気が出ていた。ここは単なる養生所ではなく、働いている人も治療を受ける人も、ここで人生を終えたり人生を始めたり人生を賭けたりする場所だった。インドでマザーテレサが誰も気にかける者も無いままに路上で死ぬ人々の手を握ることで孤独から解放するというものに近いような、人々の救済を感じた。
あえて挙げる欠点としては、良い人が良くて悪い人が悪いと簡単に分けられているところ。これだけたくさんの人が集まる場所だと、ただ食いっぱぐれた人やいい加減な人や小ズルい人がもっと色々といてそのような人の起こす問題に忙殺されそうなもの。しかしいわゆる味方側の人々はいい人が多くて内部の管理がすごく簡単になっていたのはやや都合が良い。
それから医療に関しては、医療が大変なのだという描写からの視点であって、医療のためにどのような努力、特に技術的な努力をしているのかという視点が少なかったかと思う。医者として具体的に何をやったかということにおいて、『仁』のように梅毒患者に対して薬を作ったというようものが含まれていても良かった。
あまりにも現代的なテーマ
大きな地震(おそらく安政の大地震であろう)の後の格差社会を描く。時は幕末なのだが、まるで3.11後をテーマとしたかのような現代性あふれる問題提起である。
災害により最も被害を被るのは貧しい者たちであり、貧困は身体ばかりか心の健康も蝕む。これは安政でもなければ、この作品が撮られた昭和でもない。まさしくこの平成の日本を描いている。
そう思えるほどのこの映画の今日性に戦慄すら感じ、心身の健康は金次第であるという身も蓋もない普遍的な視点を貫いたことに快哉を送りたい。
そうした物語の内容はともかくも、豪華な出演者の顔ぶれもまた観ていて楽しい。山崎努の熱演は瞼の裏にしばらく残り続けるし、桑野みゆきはとても可憐で感情移入するなというほうが無理である。
また、おとよと長坊の子役も上手い。不憫で、愛らしい彼らが観客の心をかっさらってしまう。
惜しむらくは、杉村春子にコケティッシュな芝居を存分にさせていないところだろうか。せっかく大根で杉村を殴らせるのだから、彼女にはもう少しスクリーンの中で動いて欲しかった。この女優は台詞ではなく体の動きで芝居をするのだから、大根を飛び散らかした頭をどうにかして欲しかった。あっさりと次のカットへ変わってしまったが残念。
息子と観ましたが
高校生の息子と2人で観ました。
息子の名前は明 黒澤から貰いました。
息子にとっては初の黒澤作品です。
あえて感想など聞きませんでしたが、いや素晴らしい。
人間の価値はお金だけでは無く心の美しさにあるのだという人間愛にあふれた作品でした。息子とは洋画をよく見るのですが最高の日本映画を見せてやる事が出来たと大満足しています。
人間ドラマの一つの到達点
生と死と貧困、人間愛を描いた圧巻のヒューマンドラマ。
テーマ設定からストーリー、個々の描写まで、素晴らしいの一言。
とにかく描写の完成度が凄まじい。
多数の登場人物、複雑なテーマや心の動きを扱っているのに、
状況把握に頭を悩ませるような場面がほとんどない。
場面場面の意味付け、人の動きに妥協がない。
全ての場面の指一本の動きまで研究し尽くされているような緻密さがある。
濃密な内容が頭の中にスッと、しかも怒涛の如く押し寄せてくる。
赤ひげの世界に心をごっそり持っていかれる。
映画史に残る名作中の名作だと思う。
『赤ひげ』
桑野みゆきカワイイーン!もう一発KO惚れちった。
賄い役、あれだけのベテラン女優勢でも大根で杉山春子の頭を叩けなかったというエピソードにニヤリ。
黒澤明と三船敏郎のコンビはこれが最後、ラストランを飾るに相応しい映画。感動したぜ。
原作に負けずと劣らず
名作だ。
誰もがこの社会は努力すればよくなると、信じていけそうなくらいの夢を与える。
山本周五郎に負けずに、三船さんなりの赤ひげを作れたのも勝因の一つ。
なんとなく教育されてる感じが嫌な人は、避けた方がいいかなぁ…
赤ひげ
世界映画史のベスト5に入る名作。映像、演出、音楽、演技、効果音、照明など、諸々の要素が全体の統一美を持ち、喜怒哀楽の情を越えた悟りに近い思想を円心構造で何重にも描いている。良い映画は優れた脇役が映える。杉村春子、香川京子、仁木てるみ、山崎勉などが秀逸だが、藤原鎌足が誰を演じているか観客には分からない。「天国と地獄」に続いて、その迫真の演技に魅せられる。最後に登場する笠智衆他歴史的な名優の存在感も卓越している。三船敏郎の代表作であり、加山雄三が若くしてその人物の大きさを地で表現した見事な映画であり、映画を超えた映画とも云える。これほどの完成度を持つ映画は二度と出ない。「七人の侍」「生きものの記録」「隠し砦の三悪人」「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」と続いた黒澤組の最高峰、集大成と云って間違いない。この書評を大袈裟と思われる方は、一見なされば納得なされるかと思います。(誤記訂正しました)
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