「世治し」赤ひげ everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
世治し
貧民はタダ、富裕層からは言い値の診察代、患者を入院させるためなら怪我人も出してしまう!赤ひげ先生。
勧善懲悪な世界観で、弱者の味方、正義のヒーローという描き方をされており、医師として診断・治療に苦慮するという場面はあまりありませんでした。現代と比べて検査も治療も選択肢が少ないため、やっていることの趣旨がだいぶ違うのは仕方ないにしても、容易な診断ばかりで違和感が続いてしまいました。いくら当時でも吐かせたい時に仰向けに寝かせておかないだろうとか…医学考証は???でした。
本題は医療というよりも、患者達が辿ってきた不運な生い立ちによる心の病や死に様がクローズアップされていました。彼らが抱えてきた不幸の根源である「貧困と無知」を一向に解決しない社会で、その格差や歪みこそが赤ひげの治療対象のようでした。
脇役まで豪華俳優陣、彼らの渾身の演技が引き出されています。モノクロだからこそ際立つ眼光。一切妥協のない美術。メタボ殿様(^^)。
青ひげだったら随分違う趣旨の話になったなぁ…なんて(^^;)。
個人的には、神妙な表情で傾聴している三船敏郎より、武具を振り回して暴れ回っている三船敏郎が好きです(^_^)。
everglazeさんへ
コメント有難うございます。誰もが認める名作を批評するときは慎重にしなければいけませんね。「椿三十郎」に続いて二度目の黒澤作品ですから悪い訳ではないです。ただ周りの役者が素晴らしく、ほんの一寸見劣りしただけですよ。評価も4.5にするかどうかで大分悩みました。
参考までに、淀川長治氏のキネマ旬報ベスト・テンでの寸評を御紹介します。”やっぱり「赤ひげ」です。やっぱりというところにこの黒澤には、百点満点の満足とはいかなかった。けれど今年の濁流の中の清水でしょう”
日本映画不振の時代、黒澤監督ひとり孤軍奮闘していたことが分かります。