ミツバチのささやきのレビュー・感想・評価
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動きが少なくてちょっと退屈した
総合:55点
ストーリー: 50
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 75
音楽: 65
最初の一時間というもの、物語らしい物語はない。幼い姉妹の学校生活、家庭生活、茸狩りやお喋りや夜に寝る前のちょっとした小話、そんな何気ない日常がひたすら描かれる。フランケンシュタインの映画と、それに感化されて村外れの空き家に行く冒険が、日常とは少し違う映画の物語らしい部分という程度だろうか。そんな小さなことが少し寂しい風景ながらも美しく暖かく繊細に淡々と描かれる。それは悪くないのだが、だがあまりに話が動かないので正直少し退屈もした。
後半、やっと物語が動き出す。しかしそれでも動きはゆっくりで、子供の目線で子供の時間で進行する。子供の目で見た世界はちょっと神秘的で幻想的。だがやはりちょっと退屈だった。
カメラワークも子供たちの演技もいい。映像は文学的な崇高さがあるし、アナの存在はとても大きな魅力だし質は高いなと感じるのだが、全体に大きな進展がなく動きもゆっくりで、それほど面白いとは思わなかった。上映時間のおよそ2/3が日常風景の描写では、流石に長すぎて暇を持て余す。映像の良さやそれが醸し出す雰囲気も大切だが、物語も映画には大切。そのあたりがあまり自分の感性に合わなかったのだろう。同じビクトル・エリセ監督で同じような雰囲気の作品でも、「エル・スール」のほうが物語があってずっと良かった。
深く静かな諦観
ミツバチの巣を模したガラス窓は、
そこから出る事を禁じる牢獄の鉄格子にも見える。
内戦後のスペインの、さびれた村で「フランケンシュタイン」が巡回上映
される場面から始まる、絵画のように美しい映画だが、前半は正直に言うと
眠気を感じてしまった。
だが見終わった時、忘れる事のできない深く静かな諦観に浸されていた。
腑分けされた死体から繋ぎ合わせられた怪物の悲しみと、切り離されて
また寄せ集められたごとく暖かさを感じられない家族の虚しさが共鳴
している。
アナとイサベルの姉妹も、まるで一人の少女が内包する善と悪を分割して
生み出されたようにも思える。
アナの瞳は、引き込まれる漆黒の闇(ブラックホール)のようでもあり、
相対する物の姿を映す鏡のようでもあった。
幾つもの問いかけが、こたえのないまま、ささやき続けられる。
「あなたは来ない人を待っているの?」
「あなたは精霊を呼んでいるの?」
「あなたは人生を諦めているの?」
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