「今日的なテーマとして観賞直す必要がある」未知への飛行 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
今日的なテーマとして観賞直す必要がある
1962年キューバ危機で本当に核戦争一歩手前にまで行った
その恐怖の記憶が2年後に二つの映画を産んだ
一つはキューブリック監督の博士の異常な愛情
もう一つが本作だ
どちらもテーマは同じく偶発核戦争への警告だ
しかしアプローチが違う
キューブリックは喜劇として、本作はシリアスなスリラーとして
原作それぞれ別々であるからそれは当然だ
一般的にはキューブリックの映画の方が圧倒的に知名度があり、本作は知るひとぞ知る名作になってしまった
本作は真正面から偶発核戦争の本質に迫っており、そこには逃げも隠れもない
誰もが正しく、誰もが正気で、最高の知能で考え抜かれた仕組みであっても、それ故に逆に破滅への歯車を誰も止められない恐ろしさ
圧倒的な迫真性が画面に溢れている
脚本、舞台セット、小道具もちろん出演者の演技も
ジェーンフォンダ演ずる大統領は正に大統領の風格で十二人の怒れる男達を思わせるような強烈な吸引力で画面から目を離させない演技を見せる
ソ連はもはやない、冷戦も昔話だ
しかし、それは本当にそうか?
米国もロシアも核戦力は削減されたとは言え、そのままだ
そこに中国と北朝鮮とさらに拡大して来ているではないか
米中の新冷戦は始まったばかりだ
フェイルセイフとは本来は間違って動作しても致命的な事にはならない仕組みの意味
本作の電子機器の不具合、今でいうところのサイバー攻撃によって偶発核戦争に至るストーリーは、いささかも古びてはおらず、逆に現代的ですらある、本当に起こりかねないものだ
果たして本作のソ連のように自制を新冷戦の中国はできるのであろうか?
もちろん米国も同じだ
本作のテーマは半世紀の時を越えて、妖怪のようによみがえっているのだ
ラストの途絶した電話から流れるキーンと言う高音が本作の衝撃の余韻となっていつまでも耳から離れないだろう