ミステリー・トレインのレビュー・感想・評価
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廃れたメンフィスを旅する二人はきっと素晴らしい
廃れて治安の悪そうなメンフィスを舞台に、同じホテルを利用する3組の登場人物の出来事をオムニバス形式で描いた作品。
横浜から遥々と旅してきたのに楽しそうではない日本人カップルのジュンとミツコ。(far from Yokohama)
夫を亡くし、メンフィスでは男に金を捲し立てられ、ホテルでエルヴィスのゴーストをみるルイーザと彼氏をふったディディ。(a ghost)
銃撃事件を起こすディディの元カレのジョニー、義兄のチャーリー、友人のウィル。(lost in space)
この3組の登場人物の出来事が緩やかに繋がってて、何故かおもしろいんだよな。
物語全体を通して感じられる行き当たりばったりさ、放浪すること、寄る辺がない様はまさにジム・ジャームッシュ作品の特色であろう。
またジュンとミツコがたばこの煙を口移しするのを観れただけでも大満足です。あとメンフィスの街の様子ではなくホテルの内装やそこでスクラップするミツコを写真に撮ること―そっちのほうが記憶に残らないから写真に残す―もよかった。そしてポスタービジュアルにもなっているシーンもたまらなく好き。
◇アメリカ音楽の街と異邦人
物語の舞台はテネシー州メンフィス。綿花の集散地として発展する過程から、奴隷市が開かれた歴史背景もあって、今でも人口の約6割をアフリカ系アメリカ人が占める街です。その土壌が様々なジャンルのアメリカ🇺🇸音楽を生み出して、音楽産業が栄えました。エルヴィス・プレスリー、カール・パーキンス、マディ・ウォーターズ、ロバート・ジョンソン、B.B.キング、ハウリン・ウルフなど、この街をルーツとする伝説のミュージシャンは多数です。
そんなアメリカ音楽の聖地が持つ霊気のようなものこそ、この物語のエッセンス。ソウルやロックンロールを味わい深く醸成してきた街ですれちがう人々の群像劇が、オフビートなグルーヴを醸し出します。
第一編(ファー・フロム・ヨコハマ)
日本から観光にやってきたロカビリー好きのいわゆる「バカップル」街を訪れることで二人の愛は深まったか?
第二編(ア・ゴースト)
空港での手違いで不意にメンフィスに逗留することになったイタリア人女性。メンフィス所縁のエルヴィス・プレスリーの幻影。
第三編(ロスト・イン・スペース)
自暴自棄になった男の人生の歯車が狂い始める一夜。
アメリカポピュラー音楽で歌い上げられてきたフィーリングの根幹には、社会の周縁に位置する黒人音楽の魂(ソウル)が底流しています。そのリズムのうねりを異邦人の視点を用いて立体化させています。アメリカ🇺🇸、それは折り重なる移民たちの心の声の集積であることに気付かせてくれるような作品でした。
三段落ち
3回目になるとあの曲がいつ流れるか、さっきのアレがここに繋がるかな、などとフリが多重に効く楽しい構成。電車はあっちへ、車はそっちへ、パトカーが左から右へ。
特筆すべきは衣装。スクリーミンジェイの赤いジャケットとタイ、重ね着する工藤夕貴、永瀬正敏の開襟シャツ、印象的な口紅、ふたりの下着姿、ブシェミの床屋ルック。
今観ても良い
これは久しぶり、まさかスクリーンで観れる日が来るとは思ってなかったです。
まず日本人なら、永瀬正敏と工藤夕貴の起用に驚いた事でしょう。
ジャームッシュの3編に分けたオムニバスで、これが実に味わい深い。
上の二人の他にもキャストはジョーストラマーや、スティーヴブシェミ、トムウェイツ(声だけ)、スクリーミンホーキンス、ルーファストーマスなど個性的な面々ばかり。
全く別々の人間達が重なり合う作りが絶妙で、とても心地良い着地なんですよね。
ラスト、皆違う方向へ進むのがすごい好きです。
やはり今観ても良いですね。
1989年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️⭐️✨
『JIM JARMUSCH Retrospective 2021』にて鑑賞。
この作品が日本で初めて公開されたのが1989年12月。ピークを過ぎていたとはいえ、まだまだ円高バブルの時代でした。1ドル=100円しませんでしたから…、海外旅行なんかも普通に行けるようになって来ました。
この翌年2月にはローリング・ストーンズが初来日し、東京ドームで10日間!の公演をしました。スポンサーは大塚製薬。ポカリスエットのCMには、まだ10代の宮沢りえが出ていました(『サンタ・フェ』を出す前)。
音楽フォーマットは"レコード"から"CD"へ。まだ何とかレコードも生き残っていましたが、徐々にレコード盤は下火になって行き、レコード店はCDショップへと変わって行きます。ヴァイナルが、その音質から再び見直されるまで、長ぁ〜い長ぁ〜い潜伏期の始まりです。この時、レコード盤の方が、音が良いなんて誰も言いませんでした…専門家以外は。
それでも、音楽を持ち歩く時は、カセット式のウォークマンが主流だったのかな?そこのところは、あまり良く覚えていません。
個人的には、ブルースや'60〜'70年代のソウルが好きで、朝から晩まで中古盤を漁って聞いてましたね。多くの方が鬼籍に入られましたが、「レジェンド」「大御所」なんて呼ばれるようなソウルやブルースのアーティストが来日公演をしてくれました…この映画に出て来るScreamin' Jay Hawkinsも、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』やこの作品で再び光が当たり、来日ライブが実現しました。
ほんまええ時代でした(笑)
この映画は、まあそんな時代の作品です。
インターネットなんて、もちろん無い時代…遥か遠いアメリカの、本場のブルースやR&Bが奏でられる土地を、その音楽を聴いて想像するしか無かった時代。本場のメンフィスを舞台とした映画というだけで興奮しました…当時の、正にリアルタイムなメンフィスの、アメリカ南部の土地がカメラで映し出されるんですから…。
映画の中で描かれるメンフィスの街もSunやStaxのスタジオもどこかくたびれて、もう過去の遺物と化しています。当時はもうほとんど見向きもされなかったのかも知れません。もちろん、そこに住む人たちも同じです。
それでも、東洋の遠く離れた国に住む我々には、いつまでも聖地であります。
自分もまたいつかメンフィスやシカゴ、ニューオーリンズといったアメリカ黒人音楽の聖地を訪ねてみたいと、この映画を観るたびに思うのです…。
ぼくなら.「エルビス!」「カール・パーキンス!」とは言わないで、「ハウリン・ウルフ!」って叫ぶだろうけど…。
…「ジュニア・パーカー!」でもいいか(笑)
*オーティス・レディングとかボビー・ブランドとか、メンフィスに縁のある音楽がバックで沢山流れます…ロカビリー系の音楽以外にも耳を傾けてみて下さい(笑)…もし、それが気に入れば、そこから先は泥沼の音楽体験の始まりです(笑)
JIM JARMUSCH Retrospective 2021 ジ...
JIM JARMUSCH Retrospective 2021
ジャームッシュの映画に日本人が2人も出ているというだけでも感動だか、若かりし永瀬正敏、工藤夕貴のやりとりがなんとも微笑ましく、この映画にハマっている。パンフレットで永瀬正敏がジャームッシュの人柄に触れてるが、ジャームッシュの優しさがにじみ出てる作品。
【旅④/トレイン・トレイン】
ジム・ジャームッシュのデビュー作から6番めまでの作品は、全て旅がモチーフだと思う。
出会い/集い、良し悪しではなく、その成り行きを見つめているのだ。
そして、出会い/集い、旅するのは、僕達のことではないのか。
(※ これら6作品のレビューは書き出しが同じです。すみません。)
この映画を、当時、初めて観た後、「工藤夕貴、すっげぇーかわいい‼️」と、その時付き合っていた彼女に言ったら、「チッ‼️」と舌打ちをされて、ドキッとしたのを思い出す。
この映画「ミステリー・トレイン」では、作中でラジオごしに聴こえてくるエルヴィス・プレスリーの「ブルー・ムーン」と、映画タイトルで、エンディング曲でもある同じく「ミステリー・トレイン」に、ジム・ジャームッシュならではのメッセージが隠されていると思う。
「ブルー・ムーン」は、(おそらく別れて)独りぼっちの女性が、月に向かって、自分が見えますか?そして、良い人が現れますようにと祈る歌詞だ。
そして、「ミステリー・トレイン」は、一度去ってしまった彼女が、16両編成の列車で戻ってくる嬉しさを歌っている。
ただ、この曲は、エルヴィスっぽいロックンロールじゃなくて、それこそ列車のガッタンゴットンというリズムを歌にしたような曲なのだ。
ジム・ジャームッシュは、この映画の中で、皆んなは、決して独りじゃない、きっと何かが、巡り巡って、やってくるよ!と言っているのだ。
この映画「ミステリー・トレイン」は楽しい。
メンフィスの安宿で展開する3つのオムニバス・ストーリーの主人公たちも、ちょっと変な他の登場人物も、ホテルのフロントの2人も、むちゃくちゃ個性的だ。
日本では、すっげーかわいい工藤夕貴と、永瀬正敏のキャスティングで有名だけれども、実は、日本人には少し”あるある”のようなストーリーも楽しい。
彼女と行った海外の旅行先での意見の相違とか、洋服そんなに要らないとか、ホテルの海外のふわふわのバスタオルが欲しくなるとか、疲れてるくせになぜかセックスしちゃうとか。
それだけじゃなく、このオムニバスを繋ぐ、エルヴィスの肖像画、喘ぎ声、深夜2時17分のラジオ、銃声、そして、ルイーザの前に現れたエルヴィスの幽霊、別れたディディとジョニーのニアミス。
あと、ジョニーのすっげー長い小便。
とにかく楽しい。
ジム・ジャームッシュは、こうして、メンフィスの小さな安宿ひとつとってもいろんな物語が詰まっていて、それは繋がったり、巡って、また繋がったりすると言いたいのだと思う。
決して独りぼっちじゃない。
だから、僕達の世界は楽しいのだと伝えたいのだ。
愛おしくなる作品。
【メンフィスの黒人用ホテルでの同日同時刻の、三つの出来事をエルヴィス・プレスリーをキーに描いた物語。三つの出来事のシンクロニシティが絶妙です。】
1.ファー・フロム・ヨコハマ
・日本から、エルヴィスに所縁のある”サン・レコード”と”グレースランド”を観にやって来た、若い男女(永瀬正敏&工藤夕貴)は、サン・レコードを見学するが、英語が分からず疲れ切って、ツイン1泊22ドルのアーケード・ホテルに投宿。
何気ない会話とSEXをし、翌朝、部屋内で銃声を聞く・・。
2.ア・ゴースト
・行き違いで、飛行機に乗れなかったルイザ(ニコレッタ・ブラスキ)は、街をぶらつく中、喫茶店でエルヴィスの幽霊物語を語り掛ける男と会う。
一方、恋人と別れたディディは、街を出ようとするが兄チャーリーに挨拶してから・・、とアーケード・ホテルに投宿しようとするが・・。そこに現れたルイザと同室に投宿することに・・。
3.ロスト・イン・スペース
・ならず者のジョニー(ジョー・ストラマー!)は、街のビリヤード屋で連れのチャーリーとウィルに会社を馘になった事への不満をブチマケ、三人で酒屋に行く。
店主に、ウィルを”ニガー”と呼ばれた事に腹を立てたジョニーは店主に発砲。
慌てた、チャーリーとウィルはジョニーを連れ、アーケード・ホテルにほとぼりが冷めるまで投宿。
◆この、何の関係性もない3組の物語の
”同日、同時刻、同場所”
での出来事を、エルヴィス・プレスリーをキーに、絶妙にシンクロさせて描いた作品。
<ジム・ジャームッシュのオフビートの効きも良く、彼の脚本のレベルの高さにも驚く作品。
今作の2年後、世界各地での同時刻(時差あり)に起こった出来事を描いた、「ナイト・オン・ザ・プラネット」が公開されるのである。>
工藤夕貴、永瀬正敏
「エルビス」「カール・パーキンス」と音楽にこだわる二人。メンフィスは横浜に似てるとか言ってるけど、全然違う・・・やがて22ドルの宿に泊まり、セックスの後、ラジオの深夜放送が流れてくる。朝起きると銃声。
ローマから来た女性。エルビスの幽霊話を聞かされた後、一人の地元女性と相部屋で泊まる。そして、三人の男たち。酒屋店主を殺し、同じ宿に泊まる。隣の同伴女性の恋人、兄(ブシェミ)も含まれる。
オフビート全開ののんびりした展開だが、ジャームッシュらしく面白い。しかし、小ネタを強調しすぎているきらいがあり、ワンナイトストーリーとしては弱いプロット。雰囲気はいい。工藤夕貴のヌードやブシェミの床屋姿も見られるし・・・
"FarFromYokohama"
≪JIMJARMUSCHRetrospective2021≫
スクリーミン・ジェイ・ホーキンスとサンキ・リーの掛け合いが楽しくて黒いシャツに赤スーツって渋み。
ジョー・ストラマーとブシェミの組み合わせが最高で、エドワードジャケットにエナメルのラバーソウルでロカビリーにキメた永瀬正敏の格好良さは同じ日本人として誇れる存在感、そして工藤夕貴が可愛すぎる!
永瀬正敏と工藤夕貴のジッポー技は中学生の時によく真似してみたり。
全体的にクールな雰囲気が漂いオフビートな笑いとシュールな感覚の中にゆったりとしたテンポでジャームッシュのセンスが炸裂している。
違和感のない日本人キャスト
エルビスプレスリーゆかりの町、テネシー州メンフィスにて3組の人々を描いた群像劇。
たまにはこんなロードムービー的な作品を。
同じ時間軸を描いた3部構成のショートムービーで徐々に人間関係が明らかになっていき、それぞれ独立した魅力を見せ始める作品。
当時23歳くらいの永瀬正敏と18歳くらいの工藤夕貴が違和感ゼロで日本語を話しながらメンフィスの町に溶け込んでいる姿がとても新鮮に見える。
硬派なロックンローラーのような出で立ちの永瀬正敏がとてもカッコいい。
ライターでタバコに火をつけた後にライターを空へ放り投げたかと思えばそのまま胸ポケットにインするクールかつ謎の行動を始め、旅を全く楽しんでないような無表情の割にはミツコの要望通りに旅のプランを変更してくれる優しい彼氏な一面も見せる。
完璧だ笑。めちゃくちゃカッケェ笑。
3部構成の最後には70年代を代表するパンクバンドThe Clashのvo.ジョーストラマーが結構なクズ役で登場笑。
女にフラれ、酒に溺れ、どこからか持ち出したピストルで酒屋の店主を殺してしまい、友人2人を引き連れ深酒飲酒運転でひたすらに逃げる酷い役を演じる笑。
その友人役にスティーブブシェミ!やはり撃たれる!この人が血を出していない映画を観たことがない気がする!笑
観る前から雰囲気映画の巨匠と勝手に思い込んでいたジムジャームッシュにようやく入門できた記念すべき作品。
地味に豪華な俳優やミュージシャンを起用しているようなので他の作品も観ていきたい。
メンフィスを舞台にしたオムニバス
まず、映像の色合いが格好良い!COOLだなあ、ことごく格好良いぜ!
今回も、旅行客=旅というテーマ。
さらにこの物語には、エルビス・プレスリーというロックンローラーの名前と象徴が強く出てきます。
そもそもこのタイトル自体、彼の曲からきているはず。
登場人物も格好良い。
メンフィスのとあるホテルに三組の客がやってくる。
それぞれの視点からその日の出来事を追うオムニバス。
かといって、この三組、実はほとんど交錯しなかったりするという…笑
冒頭、日本人役者が出てきます。知らなかったので思わずえってなってしまった笑
この二人がまた格好良いんだよなあ…
心にしっかり映り込む映像
不思議な作品でした。メンフィスを舞台にした3つのオムニバスの物語。繋がってるんだけど交差しそうなんだけど…。
「ミステリートレイン」といえば、やっぱりエルビス・プレスリーですか、我が家ではブルースナンバーです。どっちも聞けたのは嬉しかったです。
それぞれの話は面白くて。でも観終わったあと残っていたのは、登場人物が歩き回るメンフィスの街並みと、ホテルのフロントと、緑の中の列車の姿、心にしっかり映り込む映像でした。鮮やかな赤もモチーフになってるんでしょうか、印象的でした。
こういう感じがジム・ジャームッシュ監督の作風なら、私は大好きかもしれない。
可愛くて元気な工藤夕貴と、ルパン3世みたいなカッコいい永瀬正敏が若い!カセットテープのウォークマンが、なんだかメンフィスに似合ってました。スティーブ・ブシェーミの人のいい散髪屋さん、気の毒だけど面白いです。
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